文春オンライン

連載文春図書館 著者は語る

子宮頸がんワクチン問題に挑む村中璃子氏 “ネット上の疑い”に答える

著者は語る 『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』(村中璃子 著)

note
『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』(村中璃子 著)

 英サイエンス誌「ネイチャー」等が主催するジョン・マドックス賞を、昨冬日本人としてはじめて受賞した村中璃子さん。

「“敵意のなかで科学の普及に尽した人”を対象とする賞ですが、100人以上の候補のなかには、アフリカで黒魔術を否定して命を脅かされている人もいました。そうした候補者のなかで私が選ばれたのは、子宮頸がんワクチン問題が多くの人の命に関わるグローバルな問題であること、そして“子宮頸がんワクチンによる副反応”の動物実験について私が“捏造”を指摘したことに対し、名誉毀損裁判を起こされたことが大きかったと思います。訴訟で科学者や記者を黙らせる動きは、世界的にも大きな関心事になっています」

 これまでの取材をまとめた『10万個の子宮』を先月刊行した村中さんは、現役の医師でもある。子宮頸がんワクチンの問題に関心をもったきっかけは、テレビで見た激しい痙攣や身体の痛みなどの被害を訴える親子の姿だったという。

ADVERTISEMENT

むらなかりこ/医師、ジャーナリスト。一橋大学卒、同大学院修士課程修了後、北海道大学医学部卒。現役医師として活動する傍ら、医療問題を中心に幅広く取材・執筆。京都大学大学院医学研究科で、サイエンスジャーナリズムの講義も担当する。本書が初の著書。

「世界中で使われているワクチンが、なぜ日本でだけ問題になっているのかと、周囲の小児科医に聞いてみたんです。すると、昔から思春期の少女には、このような症状の患者がいるが、それがワクチンと結び付けられている、と。苦しんでいる症状には別の原因があるかもしれないのに、ワクチンのせいだとして、認知症の薬の投与や時には外科手術などの危険な治療を受けている子供たちがいる。そしてワクチンを接種し、この先いつかは症状が現れ一生治らないという話に怯えている子供たちがいることを知り、ショックを受けました。私はこういった子供たちにも、数多く取材をしています。昨年7月のWHOの声明も伝えていますが、慢性の痛みや痙攣、妊娠・出産に関わるリスクなどワクチンのせいで起こると言われている症状は、大規模解析の結果すべて否定されています」

 2015年秋に最初の記事を出してから、ワクチン製造企業などとの関係性を疑う書込みがネット上に溢れているが、それについて問うとこう答えてくれた。

「以前働いていたWHOやワクチン製造企業での仕事は、現場の医師は知らないワクチン学や公衆衛生について学ぶ良い機会になりました。しかし、記事を書いて私が得ているお金は、出版社からのわずかな原稿料だけです。この問題で講演に呼ばれても、ワクチン会社がスポンサーについているものは断っています」

『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』
日本でも毎年3千人が命を落とし、1万人が子宮を失う子宮頸がん。しかし導入されたワクチンは直後に薬害被害が訴えられ、接種率1%以下に激減。いったい何が起きているのか。現役医師ジャーナリストが切る。「ワクチンに関する相談は、思春期の症状に詳しい小児科や痛み外来(ペインクリニック)の受診を」

子宮頸がんワクチン問題に挑む村中璃子氏 “ネット上の疑い”に答える<br />

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー