まさに「かけだす男たち」――。エレファントカシマシの35周年イヤーがラストスパートに入っている。10月25日にリリースされた52枚目の新曲は「No more cry」。シンプルでストレート、言葉とメロディーが一つ一つ届いてくるような歌声と演奏は、最高にやさしく、そして爽快だ。
1988年のデビュー以降、時には無骨に、時にはロマンチックに数多の名曲を生み出してきたエレカシ。そのメンバーは、宮本浩次(Gt、Vo)・石森敏行(Gt)・高緑成治(Ba)・冨永義之(Dr)と中学、高校生からの仲間で結成された4人で、35年経った今も誰一人として欠けていない。幼馴染としての確かな絆と同時に、ヒリヒリとした緊張も常に感じる、独特な雰囲気もそのままだ。
限りある人生どこまで行けるか、どこまで手が届くかということに挑戦していく切迫感とエネルギーは、聴いているこちらの背を押してくる。決して順風満帆なバンドではない。ヒットと低迷期を繰り返し、たびたびレコード会社を変わり、紆余曲折、ガンガン壁に当たってきた。しかし彼らは、その壁に当たる衝撃を勢いに変え、新たな熱をもってスピードを上げてくる。彼らの歌から感じる追い風は、心地よさを増すばかりだ。
「行くぜエビバデ!」
宮本浩次のお決まりの言葉を合図に、私も何度立ち上がらせてもらったことだろう。
素朴さを失わない不思議
彼らの不思議なところは、素朴さを失わないところである。宮本のビブラートをほとんど使わない真っすぐな歌声と、石森、高緑、冨永のゴリゴリと激しいサウンド。なんというか、むき出し。風も砂埃も全部受けながら、育ち続ける太い樹のようである。また同時に、歌をうまく歌おうと意識する前の子どもたちが、大声で足を鳴らし、手拍子をし、ただただ楽しみながら歌う姿を思い起こさせるのである。
私はラジオから聴こえた「星の降るような夜に」で彼らと出会い、ブレイク曲「悲しみの果て」でCDを初めて買い、そして後追いで購入したアルバム『東京の空』で本格的に沼落ちしたというルートをたどり、今に至る。それ以降、彼らの音楽に励まされ、生きる力をもらったが、そのファン歴の中で「宮本浩次がソロになり、いつかエレカシがなくなるのではないか」というヒヤヒヤも、勝手ながら何度も想像した。