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従来の“映像授業”と“動画SNS”との大きな違い

 真っ先に挙げられるのが「講師(演者)の質と信頼性の安定感の差」だろう。

 予備校や大手企業によって制作される従来型の映像授業は、公開までに関わる人間の数が多く、かなりの工数をかけていることが多い。基本的に採用試験を通過した講師がカリキュラムに基づいて講義を提供する。採用試験の内容は様々であるにせよ、ある程度信頼がおける講師でなければカメラの前に立つことが許されないことが多く、内容やコンプライアンスのチェック体制も整っているケースが大半だ。授業自体は生放送で行われるものであっても、事前のカリキュラムや教材の作成時には多くの人が関わっている。

 一方で動画SNS上のコンテンツはどうだろうか。信頼できるクリエイターも存在するものの、講師や制作サイドの質にばらつきがあるのは否めない。中には過激な発言で注目を集める手法を好んだり、わかりやすさを追求するあまりに過度な単純化を行ったり、「嘘」の内容を発信しているケースも散見される。

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 もちろん予備校講師が間違った発信をすることもあり得るし、先述の通り信頼できるクリエイターも少なくない。そのため、塾・予備校=善、動画SNS=悪などと簡単に考えるわけにはいかない。しかしながら、参入障壁の低い動画SNSがいわば「玉石混交」であることはX(旧Twitter)上でも多く指摘されていることである。

 受験生に限らず、情報の真偽を確かめるのは難しい。虚偽の内容や不正確な発信をしている場合はともかく、「わかりやすさ」を追求する中でターゲットに合わせて意図的な省略や単純化が行われている可能性もある。それらも加味した上で信頼できる情報を発掘することに労力を割くのは流行りの「タイパ」の面から見ても得策とは言えないだろう。