問題のほとんどは「あの人」が残した“負の遺産”
シンプルに物価高は基本的に日本円が安いことで輸入物価が上がっていることが原因のひとつで、通貨安ドリブンだから金利上げようぜって話を岸田さんがリーダーシップを取らない限り解決しない面はあります。ただ、うっかり金利を上げると頑張って背伸びしてカネを借りて都内で新築マンションを買ったパワーカップルなどはせっかく実現したマイホームとバイバイすることになりかねませんし、金利が上がると証券で運用してきた俺たちのGPIFが痛むこともあるでしょうし、この辺はトレードオフと言いますか、何を捨て、何を取るかという政策にならざるを得ないのですよ。
このあたりは、ほとんどの経済現象が安倍晋三政権が長年に渡って積み重ねてきた「アベノミクス」の弊害の部分と言えます。要は、低金利で安い国に日本を誘導することで、とりあえず生活できるよう金融緩和をジャブジャブにやって、みんな仕事があって、何とかなってきたという話です。
そういう「アベノミクス」が聳え立つ負の遺産を岸田さんがまとめて背負ってどうにかしなければならないことを考えれば、岸田さんはどうにかしてその「アベノミクス」を超える何かすごい政策テーマや経済政策をでっち上げて、国民にこれをやるからお前ら協力しろという話をしなければならなかったはずです。裏を返せば、別に増税してもいいから国民経済の安定や成長に繋がるこういう新しい試みをやりますよという風呂敷が広がっていれば、無理矢理1年限りの減税とかやらんでも一定の支持は得られたのではないかと思うんですよね。
このままだとレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでは
この「岸田さんは頑張ってるんだけど、何をしようとしているのかよく分からない」からテーマ性やメッセージ力不足と判断されて、酷評され、支持を失って迷走し、総合経済対策では最終的に減税までやろうとし、内閣改造と旧統一教会解散命令請求とセットで解散総選挙に打って出ようにもどうにもならなくなってしまった、というのが実際なのではないかと思います。
このままだと岸田さんは来年の総裁任期満了までずるずると政権を引っ張り、しかし選挙の顔としては選挙互助会自民党では無理と判断され総裁選再選に向けて出馬も禅譲・後継指名も出来ず退陣という流れになってしまいかねません。
外交では岸田さんはG7広島サミットが歴史的な大成功に終わり、最近の中国大使・垂秀夫さんから金杉憲治さんへのスイッチ、ガザ地区とイスラエルの問題では米欧とは一線を画した対応をきちんと取るなど優れた手腕を発揮しているのも事実です。大統領としては偉大にはなれなかったけど元大統領として外交面で存在感を示すレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでしょうか。
個人的には、繰り返しになりますが「岸田政権が取り組んできて上手くやってきたことのアピール」と、「これから岸田政権がテーマとして全力で取り組み国民生活がこういう感じで良くなるようにしていきますよ」という話とをパッケージにしてきちんと打ち出し直すところからスタートなんじゃないかと、常々思っております。はい。