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女性に対しては、公人であっても事実の追及が許されないのか

 だが、何よりも北原さんがショックを受けたことは、政治家という公人に対する信頼性が問われているにもかかわらず、大手メディア(テレビや新聞)が、この学歴詐称疑惑を同著が社会的に反響を呼んでいたにもかかわらず、まったく追及しようとしなかったことだった。

「私が仮名で証言したせいで本の信憑性が損なわれたのでしょうか」と気に病む北原さんに、私は、「気にしないでください」と答えるしかなかったが、内心ではメディアに関わる立場として忸怩たる思いがあった。

 タレントが学歴詐称するとメディアは徹底的に叩く。また政治家に対しても以前は、アメリカの大学を卒業したと偽った国会議員が辞職に追い込まれたことがあった。しかし、小池氏に対しては何の反応もない。

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小池氏が1993年衆院選に立候補した際の選挙公報。左端の経歴欄に「カイロ大学文学部卒業」と記されている

 女性として初めて総理大臣になろうとする人を叩くのか、という批判もあった。女性に対しては、公人であっても事実の追及が許されないのか。それこそ女性差別ではないだろうか。

ジャニー喜多川氏による性加害問題が大きく報じられ…

 学歴などどうでもいい、という批判もあった。私は学歴を問題にしているのではない。詐称を問題にしているのだが、そのように話をすり替えられてしまうことも少なからずあった。

 そうした状況が続く中、今夏になってジャニー喜多川氏による性加害問題が外国メディアによって大きく報じられ、それを後追いする形で、30年以上もこの問題を放置し続けてきた日本の大手メディアが動くという現象が起こった。

北原さんが日本の実母に充てて書き続けた大量の手紙の山。中には小池氏との生活を詳細に記したものもある

 北原さんは、この問題を提起した、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが実名で証言したことに心を動かされていた。

「実名にすれば日本のメディアは私の証言を重んじてくれるのでしょうか」――。

 今回、文庫本刊行にあたって、北原さんから早川玲子という仮名を改め、北原百代の実名に切り替えたいとの申し出があった。私は無理をしないで欲しいと伝えたが、北原さんの意志は固かった。自分の残された人生は短い、悔いの残らないように、できる限りのことをしたい……という思いだという。

 この気持ちに日本のメディアは、どう応じるのであろうか。