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全国の火葬場で不祥事が立て続けに発覚

「桐生火葬場事件」とは、1933年に群馬県桐生市で火葬場職員が起こした事件のことだ。火葬場に運ばれてきた遺体から脳漿(脳のまわりを満たしている液)を盗み、高額で売りさばいていたとして、当時、日本中で話題になった。

「その頃、人間の脳液が病気に効くって噂があったんです。それで一儲けしようと考えた火葬場職員が、事件を起こしてしまったと聞いています。

 国会図書館で当時の新聞を調べたことがあるんですけど、『火葬場のグロ』なんてセンセーショナルな見出しがつけられていました。この事件をきっかけに、全国の火葬場で似たような不祥事が立て続けに発覚していったんです。

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 古くはそうした事件の影響で、『火葬場は危険』『そこで働いているのも危ない』という認識が広まったのかもしれません」

昭和初期に発生した「桐生火葬場事件」では、火葬場に運ばれてきた遺体から脳液を盗み、高額で売りさばいていたという(『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常(3)』より)

現状を変えるために、YouTubeで火葬場の“日常”を発信

 火葬場のネガティブなイメージを加速させる事件は、残念ながら現在も起きている。2023年2月、勤務先だった葬儀場の女子トイレ内で盗撮した罪などに問われた元従業員に、執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。この元従業員は、安置室で女性の遺体にわいせつ行為も行っていたという。

「多くの職員さんは真面目に仕事に励んでいる、いたって“普通”の社会人なんです。でも、一部の人たちが起こした事件の影響で、火葬場のことをいまだに偏見の目で見る人もいる。元職員として、この現状をなんとかできないかなと思っていました」

 火葬場の課題を糾弾するような発信をしても、変わってほしい人たちには届かず、現役で頑張っている人たちをさらに追い詰めることになるかもしれない。そう考えた下駄さんは、YouTubeで火葬場の“日常”を発信することにした。