「思い出しても吐きそう」編集作業をしながら執筆した1年半
――最終的に企画が固まったのは。
足立 2022年の3月です。正直、俺は「これ、もう無理だ」と思ったんです。というのも、僕が監督と脚本をやった『雑魚どもよ、大志を抱け!』の撮影が2022年の3月から入っていたので。
「これから映画の撮影があって、撮影が終わったら仕上げもあるのに、朝ドラを書いてる時間と心の余裕はない」と思って撮影していたら、福岡さんから電話が掛かってきて「笠置さんで決まりました!やりましょう!」みたいな。
「いやいや、映画の撮影でそれどころじゃないんですけど」って感じだったんですけど、福岡さんがたくさん資料を抱えて映画の撮影現場にも来てくださって。
――どこかの撮影所にですか。
足立 いや、ロケをやってた岐阜県の飛騨へ来たんですよ。わざわざ。
さすがに撮影中はひとつも資料を読めなかったけど、そういう熱意はありがたいですから。そこまでされたのは初めてでしたし。そこで「じゃあ、やります」と答えて、最終的に決定となりました。
――言い方が悪いかもしれませんが、なかなか泥臭い攻め方ですよね。
足立 そうですね(笑)。俺がモニターを覗いてる横に立っていましたよ。
――では、映画の撮影をしながら『ブギウギ』の脚本執筆を。
足立 さすがに撮影中は書けないです。4月に映画がクランクアップからまさかの2日後に、どういうふうに書いていくかを打ち合わせをして。頭はまだ300%映画のままなのに。そのあたりが一番大変で、いま思い出しても吐きそうになるんですが。そこから今度は映画の編集なんかも始まったので、気が狂いそうでした。全精力を二つのことにそそいだのは初めてだったので。
――編集にも立ち会ったのですか。
足立 編集マンの方に、家の2階に来てもらって。いまはPCでやれるから、どこでも編集できるんですよね。で、2階を編集室にしてやっている感じでした。
――自宅の2階を編集室にしたのは、脚本を書きながら編集しなきゃいけないのもあったからでしょうか。
足立 それもあったので、編集の方に「もし可能だったら、うちでやってもらってもいいですか?」と聞いて。
――2022年3月に企画決定、2023年10月に放送開始。脚本の執筆は、まだ続いていると聞いています。1年半以上という時間を掛けていますが、朝ドラの脚本執筆のスケジュールはそういうものなのでしょうか。
足立 たぶん、皆さん1年半とか2年ぐらい前から書き出すのが普通なんじゃないでしょうか。いえ、知らないですけど(笑)。だけど、そこで映画の制作を並行しながらというのは、おそらくいないんじゃないかと思うんですけど。いえ、これも知らないですけど(笑)。
――普通だったら、朝ドラに全振り、もしくはそれに近い体制で臨みますよね。
足立 当然ですよ。おかげで、本気で死ぬんじゃないかなって思いましたもん(笑)。