「最初は周囲の目が気になったが、何度か来てたら、なくなった。ネット(での買春)は怖いからやらない。どんな子かも、本当に女の子かも分からないし、美人局だってあるでしょう。風俗店にも行くけど、写真を見ても加工されていて実物と違う。ここは、目の前にいるから、好みの子を探せるんですよ」
淡々とそう答えた。売る側、買う側、それぞれに理由がある。
買春する男たち
30代のこの男性は取材に応じてくれたが、買春客の多くはそうではない。買う側は、20代くらいの若者から60代くらいまで幅広い。スーツ姿もいれば、ジャージにジャンパーといったラフな格好まで、さまざまだ。似たような格好で売春をする女性たちに比べ、違いが際立つ。
男性たちに、どうしてここに来たのか尋ねて回ると、少し場所を変えて答えてくれた43歳の男性がいた。「最初は興味本位だった」という。仕事は「個人事業主」と言葉を濁す。路上売春のことは知人から聞き、2023年に入って月1回のペースで来ている。
「どんな子がいるんだろうと思ったら、意外に可愛い子も普通にいるんだなって。ホテル代を入れても風俗店より安く済むし、正直、(風俗店の)プロじゃなくて素人だというのも(よい)」。風俗店には30代から通っていたと言い、罪悪感はないようだ。「ご家族は?」と尋ねると、「息子がいるんだけど、娘がいたら、来られなかったかも。娘がやっていたら? そりゃショックでしょう。家族にバレたら一発アウト」と答えた。
私に対して何度も「警察じゃないよね」と念を押してきたのは、ワイシャツ姿の会社員だった。「警察が記者を名乗ることはないし、そもそも買う方は捕まらない」と言うと、「だよね」と応じた。軽いノリだが50代で、「これでも一応、管理職なんだよ」と明かしてきた。業種は言わなかったがメーカーに勤めているという。「ここの女の子は、こっちも気楽なの。相手がよければホテルだけじゃなく食事に行くこともあるけど、使うのは2、3万円。関係もその時だけ」。買春していることは、会社や家では「絶対言えない」という。
「ウィンウィンでしょ」と話す人もいた。茶髪の頭にタオルを巻いた30代の男性だ。物色するように歩いていたところを話しかけた。「彼女たちは金が欲しくて、自分は金を出して、やることをやってもらう。売春売春って言うけど、互いによければ誰に何か言われるものじゃない。別に値切らないし」。3日前も来て、1万5000円で22歳の女の子とホテルに行った。「その金であの子もホスト行くんでしょ」
彼らに共通していたのは、買うこと自体は「怖くない」ということだった。後ろめたさは少なからずあるようだが、性病への感染や女性とトラブルになるといったリスクは考えていなかった。いずれも、どこにでもいそうな男性だった。