「声優は、アニメのアフレコだけで食うのは不可能!」と語るのは、アイドル声優のプロデュースに関わる株式会社スタイルキューブ代表のたかみゆきひさ氏。いったいなぜ声優はラジオやイベント出演など「アフレコ以外の仕事」もやるべきなのか?
業界事情から、今直面する問題、声優のプロデュース/マネジメント術を明かした新書『アイドル声優の何が悪いのか? タレントとしての声優マネジメント』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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アニメのアフレコだけで食うのは不可能!
前編で、テレビアニメのアフレコのみでは、週4本のレギュラーをこなしても声優の月収は20万円に満たないことを確認しました。週4本のテレビアニメのレギュラー、新人声優が取れるでしょうか。ものすごくハードルが高いことですよね。このように、新人がテレビアニメ出演だけで食っていこうと思っても、かなり大変だということが容易にわかります。よって駆け出しの声優はアルバイトで生活費を稼ぎつつ、アニメのオーディションに挑戦し続けることになります。受からなければ声優としての収入はゼロ。収入がゼロの間でも自分を磨くために本を読んだり映画を観たりワークショップに参加したりなどの出費はかかるわけです。
テレビアニメもメインどころに抜擢されれば、アニメに付随したラジオ出演やキャラソン歌唱、イベント出演などが発生するので、アフレコ以外の収入もあるし、人気が出れば主題歌を歌ったりするなんてこともある。要するにテレビアニメだけで声優として食っていくには、メインどころにキャスティングされ、タレント的な活動をすることが重要なわけです。
……ということで、テレビアニメのアフレコだけで声優として食っていくというのがいかに難しいか、ということをわかっていただけたと思います。ナレーションだったり、ラジオやイベント出演だったり、歌だったりとアフレコ以外の仕事をどんどんやっていかないと収入的には厳しいのです。
声優事務所がやっていくには?
声優として食べていくのは大変であることを知っていただいたうえで、次に声優事務所の視点から「声優業」がビジネスとしてどのように成立しているか、こちらも計算してみましょう。
仮に先ほど例に挙げた月25万円売り上げる新人声優を基本単位として考えてみます。月25万円売り上げる声優がひとりいる事務所は、事務所の取り分が月5万円です。月5万円で事務所の機能として何ができるか……何もできないですね。マネージャーの給料、事務所の家賃、どれも出せない。これではビジネスとして成立しません。