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 そもそも事務所を経営するのにどのくらいかかるのか、めっちゃ雑にですがシミュレーションしてみましょう。社長兼マネージャーとして事務所のスタッフがひとりとします。社長ですが、給料は20万でガマンすることにしましょう。事務所は家賃7~8万円のアパートで水道光熱費合わせて10万円としましょうか。

 電話とかスマホやインターネットも必要ですね……事務用品とか交通費とか雑費を入れて、安く見積もって5万円としましょう。そんなざっくり内訳で事務所のランニングコストを月35万円と仮定します(もちろん本当はもっとかかります)。営業費とか税金とか細かいことを考えるともっといろいろありますが、ひとまず無視します。

声優事務所もお金がかかる。写真はイメージ ©getty

 そこでタレント(声優)の取り分を8割、事務所を2割として計算すると、事務所のランニングコスト35万円の支払いを保つためには、純粋に声優が稼働した報酬だけで売り上げる場合タレントの報酬は140万円ですから、毎月計175万円以上の売上が必要です。月25万円売り上げる声優で考えると、7人いればようやく175万に到達します。

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アニメだけでは事務所も経営不可能!

 このように、週4本もレギュラーを持つようなスーパー新人声優が7人いても、このビジネスはトントンだということがわかります。しかも社長兼スタッフがひとりという仮定です。週4本のレギュラーを持つ7人というと、もし全部が別タイトルのアニメだとすれば一ヶ月で28タイトル、つまり現場は28カ所、収録数は112。当然マネージャーは全現場には行けません。なので行かないことが前提になります。

 実際に声優事務所のマネージャーは、かつては基本的に現場に行かないというスタイルをとっていました。マネージャーひとりですべての現場に行くことは無理なんです。先ほど述べたように、現実的に声優は25万円を稼ぐとしたら週4本テレビアニメのレギュラーをするわけではなく、テレビアニメ週1本に加えてラジオのレギュラーやちょっとした収録があって……ということで25万円を確保することになります。しかしそれでも25万円売り上げる声優7人を、スタッフひとりでやりくりするのはかなり困難でしょう。

 事務所の費用を削りに削った計算でも、こんなものです。さらに実際は社会保険料や税金その他様々な出費があります。ということで「テレビアニメ出演のみでは声優事務所ビジネスは成立しない」ということを、ご理解いただけたでしょうか。