2006年『涼宮ハルヒの憂鬱』の朝比奈みくる役で一気にブレイクし、活動を続けていた声優の後藤邑子さん。一方で、多忙を極める中、持病である自己免疫疾患の治療から足が遠のき、民間療法にも頼って明らかな自覚症状が出るほど、身体は限界に近づいていた。
そんな当時の後藤さんの日々を、『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』より一部を抜粋して引用する。
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ファーストアルバムからお世話になっている音楽レーベルLantisプロデューサーの櫻井優香さんから「そろそろライブをやってみない?」と言われました。これだけアルバムを出していたら普通はとっくにライブをやっているタイミングです。
じつはこれまでにも何度かライブは勧められていました。私は、「歌唱レッスンをうけてから」「もう少しうまくなったら」と先延ばしし続けていました。だって、生で歌うには私の歌唱力はあまりに足りない。
でもこの時ばかりは「やりたい!」と思いました。そんなに長くは自分の身体がもたないという予感がありました。
生死のようなシビアなものを考えたわけではないです。この時はまだ、通常の声優業は続けられると思っていました。ただ、今のようなタレント活動はそろそろ身体が限界を迎えるだろうと、身体が自由に動いて声が出て、皆の前に元気な姿で出ていける時間は残り少ないだろう、という予感です。
スタジオは去らないけど、ステージはきっと去る。だったら早く、応援してくれている人たちに会おう。大げさだけど、去る前に「ありがとう!」をちゃんと伝えておこうと思いました。
これはファーストライブであり、「ラストライブ」でもあります。ライブは2010年の10月。ライブ用に新しいアルバムも作ることが決まりました。