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「アフレコによる収入だけでは食っていけない」声優が「アイドル・タレント化」してしまった特殊事情

『アイドル声優の何が悪いのか? タレントとしての声優マネジメント』より #3

genre : ライフ, 芸能

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 なぜ今の声優は、アフレコ以外の仕事も積極的にやらないといけないのか? 声優が「タレント」として歌や踊りなどさまざまな仕事に進出していった特殊事情を、アイドル声優のプロデュースに関わる株式会社スタイルキューブ代表のたかみゆきひさ氏が解説。

 業界事情から、今直面する問題、声優のプロデュース/マネジメント術を明かした新書『アイドル声優の何が悪いのか? タレントとしての声優マネジメント』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

声優はなぜアイドル・タレント化したのか? 画像はイメージ ©getty

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声優事務所は実質エージェント契約

 最初にお話ししておくと、声優業界は《実質》「エージェント契約」で芸能界は「マネジメント契約」です(あえて《実質》と書いた理由は後述します)。これ、一般には意外と知られておらず、ゆえに声優業界も芸能界と同じような契約なんだろうという認識で語られることが多いです。しかしそれが大きな問題なんです。

 さて、エージェント契約とマネジメント契約はそれぞれどういったものなのでしょうか。先にみなさんが知っている(と思う)「マネジメント契約」について。

「マネジメント契約」はタレントが事務所から雇用されているような関係です。わかりやすく言うと一般的な会社と社員のような関係で、原則的に所属する事務所の仕事をし、他社とは直接仕事をしません。よって事務所の決めてきた仕事をこなし、何か事故や事件などがあれば事務所が責任を持って対応してくれたりします。なかには各種保険などの面でも手厚い事務所もあります。良くいえば「面倒見てくれる」、悪くいえば「自由が制限される」ということになります。日本の芸能界ではほとんどがこのマネジメント契約なので、おそらく一般的にみなさんの持っている芸能プロダクションの契約形態の認識はこれです。

 これに対して「エージェント契約」は、事務所が何でも面倒見てくれるわけではない。「自分でどうにかする」が基本の契約です。海外ではこのエージェント契約が多く、わかりやすい例としてハリウッドスターのエージェント契約で見てみましょう。