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 僕が前項のような経験をした頃、アニメはいまほどには大衆化していませんでしたが、声優はブームとなって日本武道館でコンサートをやる人が出ているような状態でした。雑誌でグラビアが組まれるようにもなり、だからこそ声優が写真をセレクトしなければならない状態だったわけです。とはいえ、ギャランティーについてはアニメにおいてはランク制度などの制定はあったものの、その金額が市場規模に対して大きく変わることなくいまに至ります。

声優はメインカルチャーになったけど…

 声優/声優事務所は、テレビアニメのアフレコによる収入だけでは食っていけないことはこの章の始めで確認しましたよね。そこで声優業界では「アニメのアフレコ」以外で、より高額な収入が発生する仕事が必要となってきました……キャスティングなどの制作業務や養成所などもそうですが、声優業界は大きくなっていった声優人気という需要もあり、声優のアイドル化/タレント化を受け入れる方向に進行してきたわけです。いまや声優が歌ったり踊ったりすることは当たり前の時代になり、10代の若い世代の声優も増えました。

写真はイメージ ©getty

 これはなるべくしてなった進化であったと思います。これまで裏方であった声優というタレントに付加価値をつけて展開したほうがマーケット/ビジネスは広がります。アニメやゲームを中心とする日本のサブカルチャーが台頭した時代が望んだ流れでもあるでしょう。「付加価値のついた声優」=「アイドル化/タレント化した声優」というものが生まれ、世の中に認知されたおかげで「アイドル化/タレント化した声優」は通常より多くのギャランティーを手にすることができました。これは喜ばしいことだと思います。

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 アニメ業界でも様々なビジネスチャンスが生まれました。なりたい職業ランキングの上位に声優が入るようにもなりましたし、業界の活性化に繫がったことは間違いありません。しかしサブカルチャーが大衆化してメインカルチャーとなると、起こるべき問題=しわ寄せが当然発生します。