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 料理上手な人が冷蔵庫の残り物でパパッと一品作れるのって、日々の蓄積じゃないですか。それと同じで毎日毎日、圧倒的な量の文章を書くことで、息子の中にある知識の点と点を結んでアウトプットする練習をひたすらしたんです。彼もスイッチが入って、一日5時間ほど集中することができるようになっていました。

 

成功譚として報道されることへの危惧

――お子さんの特性を活かす方法を編み出して挑んだ受験だったんですね。

赤平 そういう意味でもやっぱり発達障害の知識が大事で、薄い知識だとうまくいかないんです。知識が足りないと、先生も保護者も「発達障害の対策をやっても、うちの子はダメだった」と諦めてしまう。そうすると、「支援してもダメな子」というレッテルが貼られてしまい、子どもの自己肯定感も下がってしまいます。

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 でも、発達障害の知識をつければ支援のバリエーションが増えるので、AがダメでもBもある、Cもあると、攻め手が増えるんです。

――こういう取材を申し込んでおいて恐縮ですが、“発達障害のお子さんが受験2か月前にチャレンジして麻布に合格”といったような、ある種の成功譚として報道されることに危惧はありますか。

赤平 すごくありますね。記事をご覧になった方から「たった2か月の勉強で麻布に受かるのはすごいですね」と誤解されたり、「赤平さんの息子さんは高IQだから良かったけど、うちの子は違うから」という意見をいただくことがあります。

麻布中学に合格したのは“天才”ではなく“努力”の積み重ね

 お話しした通り、勉強自体は2か月前に突然はじめたわけではなくて、小学校1年生のときからずっと、他のお子さんよりも苦労しながらやっていたんです。病院や習い事の5~10分のスキマ時間でも勉強できるように、息子はいつもプリントとバインダーを持ち歩いていました。だから天才なわけでもなく、彼の努力の積み重ねでたどり着いた麻布中学でした。

偏差値50台から努力して麻布中学合格にたどり着いた(写真=本人提供)

 私もメディアにいた人間ですから、キャッチーなタイトルをつけたくなる気持ちもわかります(笑)。私自身、メディアに取り上げられやすい肩書であることを分かった上で、発達障害の問題を少しでも取り上げてほしいと思い、インタビューでお話しさせていただいています。でも実は、「本当に正しい方法なのか?」といつも悩んでいます。