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 寄る辺ない柿本母子は居候の身、石井らとは決して対等な関係ではなかった。それは歩夢くんにとって“生き地獄”の始まりだった。

石井は「怪我をさせるよう指示をしていない」と否認

 歩夢くんに対する暴行は、引っ越した直後から始まった。本庄の家では、丹羽が設置した飼い猫用のペットカメラに、大人たちによる犯行場面が数多く記録されていた。そのうち、歩夢くんの胸倉を掴んで頬を平手打ちする(2021年1月)、頭部や顔面を足で蹴る(同3月)、ハエ叩きで頭を何度も叩く(同3月)といった事件は、石井の単独犯行だ。

石井陽子被告(ANNより)

 証拠映像が存在し、それらを認めた石井は、こう証言する。

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「X子さんの家にいる時から、歩夢くんは他の子に比べて、粗暴なところがあると聞いていました。保育園でも弱い者イジメをして手を焼いていると。我が家で暮らし始めてからすぐくらいに、歩夢くんが保育園で生後数か月の赤ちゃんを蹴っ飛ばしたり、踏んづけたりしていると聞いたので、厳しくしないといけないと思いました。それが(暴行の)ベースにありました。私より前に、知香が歩夢くんに手を上げていましたし、私や知香が怒る分には、歩夢くんに怪我をさせることもないと思っていました」

 だが、保育園の保育記録によると、歩夢くんに落ち着きや集中力がなく、他の園児に手を出すような行動が目立ち始めたのは、本庄の家で同居を始めた時期以降だという。

 傷害致死、死体遺棄、暴行、監禁、詐欺など12の事件で罪に問われた石井は、傷害致死のみ「一切手を出してない」「怪我をさせるよう指示をしていない」と否認。石井が傷害致死の責任を負うかどうかが、この裁判の最大の争点となっている。

さいたま地裁

被告人質問で初めて登場した“新証言”

 歩夢くんが死亡したのは、証拠映像や音声のない2022年1月18日――。当日午後、歩夢くんは家で食事中にお漏らししたとして、石井と丹羽に叱られていた。石井は仕事中の知香にしつこく電話をして職場を早退させると、現場となる1階8畳の和室に、4人が揃った。石井の証言はこうだ。

「お漏らしのあと、丹羽が強めに怒っていて、歩夢くんに冷たいシャワーを浴びせたりしていたので、丹羽に怒るのをやめてほしくて、母親の知香に戻ってもらいました。帰宅した知香は、歩夢くんをいつものように叱り始めました。私は以前から丹羽に麻雀を覚えるように言われていて、その時は、テーブルで麻雀の牌やルールを覚えることに集中していました。目の前にいた丹羽が、歩夢くんのところに行った記憶はありません。気づいたら丹羽が歩夢くんの体を投げて、歩夢くんは立ち上がらず、意識を失っているように見えました。呆然としました」(石井)