8畳間の同じ空間にいながら、石井は麻雀を覚える作業に没頭していたため、指示も出していないし、止める暇もなかったというのだ。これは「記憶が整理できてきて、後から思い出した」という、被告人質問で初めて登場した“新証言”だった。
「その前後、丹羽は歩夢くんに麻雀の牌の絵を描かせていたのですが、うまく描けていなくて、イライラしていました」(石井)
夫に歩夢くんの遺体を取られることを懸念し、床下に埋葬
一方で、知香と丹羽は、暴行の発端として、石井から歩夢くんと「相撲」を取るよう指示があったと証言。「相撲」とは、その2日前の16日にも、就寝の挨拶をしなかった歩夢くんに知香が行った体罰で、「お相撲の時間かな、お母さん」と指示したのが石井だった。18日は、丹羽も石井から「洋樹さんも相撲を取ったら?」と言われ、知香と交代後に2度、歩夢くんを畳の上に叩き落としたところ、立ち上がらなくなったという。
虐待の発覚を恐れた3人の大人は、誰一人救急車を呼ぼうとせず、歩夢くんは知香の腕の中で息絶えた。知香の証言によると、石井はその後、歩夢くんの死が発覚すれば、遺体は夫の元に引き渡されると示唆。「畳の下に土がある」と、埋葬して隠すことを提案したという。一方で石井はこう主張した。
「歩夢くんを手元に置いておきたい知香は、まだ夫と離婚が成立していなかったので『出頭したら夫に遺体を取られるから、庭に埋めたい』と言い出しました。私は『人の目もあるし、外の庭には埋められない』と話すと、知香が『じゃあ、家のどこかに埋めることはできないか』と。そこで私か丹羽が『家の床下しかないよね』と言って、知香が同意したんです。母親としての気持ちに共感し、寄り添ったつもりでした」(石井)
「まさかこんなに早く警察が来るとは思わなかった」
石井は「逃げ切れるなんて思ってないです」と語気を強め、知香の離婚が成立するのを待ち、自分や丹羽も身辺整理をしてから「3人で出頭するつもりだった」と語った。しかし、埼玉県警が動き出すまで、彼女らがそうした行動を起こした様子はなかった。
「まず精神状態を整えるのに精一杯でした。まさかこんなに早く警察が来るとは思わなかったので、何もできていない状況でした」
石井は、居候していたシングルマザーの知香や歩夢くんのことを「家族だと思っていました」と語った一方、家で飼っていた猫たちについても「人間と同じ大事な家族、我が子でした」と言い切っている。だが、歩夢くんが受けてきたのは、動物以下の惨たらしい仕打ちだった。