2022年3月、埼玉県本庄市の借家床下から虐待死した柿本歩夢くん(死亡時5)の遺体が発見された事件。実母の柿本知香(32)、無職の丹羽洋樹(36)と石井陽子(56)の3被告が、傷害致死、死体遺棄などの罪に問われた。

 すでに一審を終えた知香と丹羽は、それぞれ懲役10年、同12年の有罪判決を受け、控訴中。2人は公判で一連の虐待を石井が主導したと主張した。現在、その“主犯”石井の裁判員裁判がさいたま地裁で行われている。

 11月10日の公判では、歩夢くんに致命的な一撃を加えた石井の内縁夫・丹羽が証人出廷した。犯行当時、石井と丹羽は交際10年。法廷証言と独自取材から、2人の異様な関係性を浮き彫りにする――。

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丹羽洋樹被告

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写真よりだいぶ太ってる「でも心の綺麗な人だと…」

 2007年、都内の私大生だった当時20歳の丹羽は、mixiを通じて「1つ年下」の「ナカムラアオイ」と知り合う。その正体が、当時40歳の石井だった。石井の虚飾に塗れた半生は別稿に譲るが、数年後、鉄鋼会社に就職していた丹羽は、石井と初めて対面する。

「メールで連絡を取り合っていた時、彼女の写真を数枚もらいましたが、それと比べると会った本人は、だいぶ太っていると感じました。でも、見た目で判断せず、心の綺麗な人だと思って惹かれていたので、交際を始めました」(丹羽の法廷証言)

石井陽子被告

 裁判を傍聴した丹羽の親友Aさんが補足する。

「丹羽は大学卒業後、職場近くの千葉県浦安市のアパートに住んでいました。遊びに行った時、“アオイ”と名乗る石井が、すでにカノジョとして転がり込んでいました。実家は金持ちだけど、飛び出してきて、丹羽のところに身を寄せているんだと」

同居していた老齢男女も死亡 床下の老女の遺体は白骨化

 やがて石井は丹羽の住まいを出て、本庄市にある古びた一軒家――、事件現場となる借家に移り住む。ヘルニアを理由に仕事を辞めた丹羽も、石井を追ってこの借家の住人として加わった。2015年5月のことだ。

 当時、本庄の家には2人の老齢男女も同居していたが、2017年9月に老女が死亡。その半年後の2018年4月、老人が自殺している。実は死亡した老女は石井の元内縁の夫の養母で、自殺した老人は石井の養父だったことが公判で明らかになっている。石井はこの奇妙な同居人のことを「私のオバとその内縁の夫」と丹羽に説明していた。

 なお、死亡した老女の遺体は床下に埋めて隠され、石井は彼女の老齢基礎年金、厚生遺族年金などを不正に受給し続けた。石井の公判で扱われている事件の1つが、この詐欺罪だ。老女の遺体は、歩夢くんの事件後、現場の借家床下から白骨化した状態で見つかっている。

現在の事件現場。地中からは歩夢くん(当時5歳)の遺体が発見された ©文藝春秋

「石井さんが年金を詐取していたことは分かりませんでした。使い道も知りません。私は彼女と結婚する前提でしたので、誠意をみせるつもりで、交際を始めた頃からキャッシュカードやクレジットカード、通帳などを全て石井さんに預け、一括で管理をお願いしていました」(丹羽)