目をパチパチさせ、首をひねり…いじめやパワハラを全面否定
着席すると、今度は井場氏が外部の弁護士によって作成されたという報告書の概要を読み上げる。
内容は、遺族が主張していた上級生らによるいじめやパワハラを全面否定し、過重労働や過密日程による心理的負荷が原因というもので、到底、世間が納得するようなものではない。
さらに井場氏の報告書の読み方も、見る側の不信を誘うものだった。緊張していたのかもしれないが、視線を書面に落としたままで、単調なこもった声で早口で字面を読み上げていく。そして時おり、焦点の合わない上目使いをちらっと会場に向け、会場の記者たちの顔色をうかがうような気配を見せる。
井場氏の中には、報告書を読み上げることへの不安と後ろめたさと怯えが強くあるように見えた。
質疑応答に入ってからも、木場氏や村上氏が質問に対して考え込む場面が度々あった。「指導」「いじめ」「ハラスメント」などの言葉を聞くと一瞬、彼らの表情が固まる。
「(ヒアリングで)初めて話す人に真実を話せるか疑問」と報告書の正確性を確認する質問や、「これまでにも指導という名のハラスメントはなかったのか」「いじめやパワハラの相談はなかったのか」などの追及に、木場氏は目をパチパチさせ、考え込むように首をゆっくりひねる。村上氏はうつむくように視線を落としたまま動きを止めた。そうして、しばし考え込むような間をあける。
質問によっては木場氏が否定しながらわずかに頬を緩め、首をひねる様子も見受けられた。
報告書を公表して質疑応答を受けるのだから、このような質問がくることは想定内だったはずだ。にもかかわらず「なぜそんなことを聞かれるのかわからない」「思い出せない」というような雰囲気を演出する間と表情は、わざとらしく不自然さが際立った。