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しわ寄せの矛先は……

 声優のアイドル化/タレント化の進行。それに対する声優事務所のリソースとノウハウ不足。

 しわ寄せの矛先は、人気声優とそれを支えるスタッフたちへと向かいます。

 声優ファンの方は心当たりがあると思いますが、近年は有名なタイトルに数多く関わっているような声優が活動休止するニュースが相次いでいます。その多くは、アイドル/タレント的な活動を行っている人気声優です。

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 人気コンテンツをプロデュースしている業界人にとっては、もはやそうした事態が起こるのは日常茶飯事といってもよいほどです。しかも表に出ているのは、ごく一部。もちろん、本人にも周囲にもどうにもできない類の病気で休んだり、その他家庭の事情などが原因で廃業せざるを得ない方は致し方ありません。ですが、やむなく体調不良で休業する方が続出している……。長きにわたったエージェント体制(声優なんだから自立した大人なはずだよね)という認識(これは事務所だけでなく、業界的な認識)。ゆえにこうした変化があるにも関わらず気づきづらい、対応に至りづらい状況と考えられます。

 アイドル化/タレント化した声優ほど、仕事量は多く、仕事の質も複雑です。声優側は、人気になるほど自分は忙しいのに事務所はそれに見合ったフォローをしてくれない……そのような考えに陥って心身を衰弱させてしまうことでしょう。

写真はイメージ ©getty

 もちろん経営の差配ではあるので、タレントに不満を抱かせてしまうことは基本的に事務所側の落ち度と言われてしまうかもしれません。ですが事務所は、人気声優だけをマネジメントしているわけではなく、所属している声優全員をマネジメントしています。マネージャーはひとりで何人もの声優を担当していたりします。必死にフォローをしようとしても仕事量に限界はあります……事務所側の人材も、実は無理がたたって心身を壊して休職/離職してしまうケースが多数発生しているのです。そして、事務所の取り分が少ないからと言って、声優に対して「病んでも面倒見られない。自分のことは自分でやりなよ」とはさすがに言えません。

 このように、声優も声優事務所も疲弊しているのが現状です。そんななか、みなさん本当によくやっていると思います。