あの日、……たしか昼頃だったと思います。
何気なくスマホでネットニュースを見ていたんですね。
そうしたらニュースの見出しに、花の名前を見つけました。最初は同姓同名の別人じゃないかって思いました。でも、見出しには“女子プロレスラー”と書いてある。その先を読むのが本当に恐ろしかったです。
その頃、自分はプロレス界といったん距離を置きたくて、現役時代に使っていたスマホの電源を切っていたんですね。
「まったく現実感がなかった」
花のニュースを知って、慌ててプロレスラー時代に使っていたスマホの電源を入れると、数え切れないほどの着信履歴がありました。そのほとんどが早朝に現役のプロレスラー、プロレス関係者からかかってきたもので、ニュースが出る前に知らせてくれたのだろうと容易に想像がつきました。
少し気持ちを落ち着かせてから、まず電話をしたのが、花が所属していたスターダムのロッシー小川さんでした。
「リリースが出る前に、花月に知らせるべきだと思って……」
その声は今まで聞いたことがないほど沈んでいました。それから選手や関係者に連絡をしましたが、何を話したのか覚えていません。頭の中が真っ白になって、何も考えられなかったのだと思います。
そして……迷いに迷って、悩みに悩んで、何度も「今するべきか?」と考えに考えて木村響子さんにも連絡しました。やっぱり、声を掛けないわけにはいかないと思って……。
そうして、花に直接会わせていただくことができました。
花は亡くなっているのがウソみたいに、キレイなままで、いまにも目を覚まして「花月さん!」って声をかけてきてくれそうでした。
生前の花と会ったのは、引退してから数週間後。2020年の3月に一緒に食事をしたのが最後でした。
あのときは、あんなに元気だったのに……。そう思うと、すべてが夢の中の出来事のようで、まったく現実感がなかったです。