「え~、キモチ悪いよ」「そんな人、本当にいるの?」

 若かりし上戸彩さんが性同一性障がいの生徒を演じたことでも知られる『3年B組 金八先生』(第六シリーズ/2001~2002年放送)。当時の時代からして、とても斬新だったこのキャラクターは、視聴者にどう受け止められたのか?

 当時のLGBT事情がわかる、元女子プロレスラー・石野結さんの著書『元悪役女子プロレスラー、男になる!』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

ADVERTISEMENT

2001年、ドラマ『3年B組 金八先生』で性同一性障がいの生徒・鶴本直を演じた上戸彩さん ©文藝春秋

◆◆◆

野球に夢中になる

 小学3年生から野球を始めました。

 バットを振って、白いボールを追いかけて、ベースの間を思いっきり駆け回って……、やってみると野球は本当に楽しかったです。

 でも、この野球が、自分の性別に対して「あれ? 私は他の人とは違うのかな?」という思いにさせたのは皮肉なことでした。

 いまでこそ、女子で野球をやっている子は珍しくなくなりましたけど、当時は本当に少なかった。

 自分のチームでは、女子は一人だけ。試合でも、相手チームを含めて女子は自分しかいないから「どうして?」という目で見られる。そういう状態が続くと、「本当にここにいていいの?」って子ども心に不安になりました。

小学校高学年時代の元女子プロレスラー・石野結さん(写真:本人提供)

 この頃の将来の夢は、プロ野球選手でした。今だったら可能性はゼロではないですよね。プロ野球の独立リーグには女子選手もいますし、読売ジャイアンツにも女子チームを作る動きがあったりしますから。

 でも、自分が子どもの頃は、そうした夢を持つだけ無駄でした。このときほど「男子だったらな……」と悔しさを感じたことはなかったです。当時は足が速かったので、将来の目標を聞かれたら本当の夢は隠して、「陸上でオリンピックに出ることです!」って答えることにしていました。

 それほど好きな野球でしたが、あまり長くは続けられませんでした。

 両親が離婚をしたんです。