いまなら父と母、それぞれに問題や事情があっての決断であることはわかります。
でも、9歳の自分には何も理解できませんでした。離れ離れになって暮らすことが、ただただ悲しくて、最後まで父の方についていくといって母を困らせた記憶があります。
結局、自分は母に引き取られることになり、引っ越しをしたために野球も辞めることになりました。
両親の離婚は正直かなりショックで、しばらくの間、かなり落ち込みましたね。
『3年B組 金八先生』でLGBTを知る
自分の性に対する違和感の正体がなんとなくわかってきたのは、この頃でした。
きっかけになったのが、ドラマの『3年B組 金八先生』(第六シリーズ/2001~2002年放送)です。ご存知の方も多いと思いますが、このシリーズには性同一性障がいの生徒が登場するんです。上戸彩さんが演じた、鶴本直です。
直は体は女性だけど、心は男性というキャラクターでした。
女子の制服を着ることを拒否して、男子の学生服で登校し、体育の時間も赤のブルマではなく、黒の体操着を着て男子として生きようとします。
その姿をテレビで初めて観たときに確信しました。
「あ、これは自分のことかもしれない」と。
心は男の子だけど、体は女の子。
完全に自分と同じでした。直は自分と同じ悩みを持って、苦しんでいるように見えました。
センセーショナルな内容のドラマでしたから、クラスにも観ている子がたくさんいました。みんなには直はどんなふうに見えているんだろう。とにかく知りたくて堪りませんでした。
それである日、さりげなく直のことをどう思うか、周りの友だちに聞いてみたんです。
返ってきたのは、思ってもみなかった反応でした。
「え~、キモチ悪いよ」「そんな人、本当にいるの?」
正直、これはむちゃくちゃショックでしたね。
子どもの反応ですから、いまなら仕方がないことだってわかります。当時はLGBTという考え方もいまほど一般的ではなかったし、そうした現実があることを受け入れることも難しかったんだと思います。
だから、本当の自分は隠しておくことにしました。嫌われないためには、周りに合わせることが一番だと思ったから。「いるじゃん、みんなの目の前に直はいるじゃん!」なんてことは、絶対に言えなかったですね。本当は一番言いたかったことだったけれど。