友達に旅の自慢を話すように、居酒屋で話すように書き進めて、ほぼほぼ1冊くらいの原稿になったときに見せたんです。ホントに書いてきたんだ!って驚かれたけど、読んでもらったらすぐに出版が決まりました。測量会社もちょうど1冊目の本が出版されたぐらいで倒産。
いい機会だし、むしろ自分で書くより、他の人に書かせる編集者になった方が楽だと思って出版社に就職することにしました。
「酒飲む? タバコ吸う?」丸山ゴンザレスを生んだ一人の社長
――転職先は実用書やビジネス書の版元の会社だったそうですね。すぐに決まりましたか?
丸山 他にも入社試験を同時に受けていましたが、そこの社長さんが他社を断るなら今すぐ採用してやるって。一応他社の試験も受けたんですけど、もう就職活動がめんどくさくなっちゃっていたので、お願いします!と伝えて。社長が「酒飲む? タバコ吸う?」って聞くから「ハイ」って答えると、「今から飲みに行こう!」って昔気質の社長で、ホントお世話になったんです。
もちろんその後の上司たちにも感謝してますけど、社長が妙に俺に期待してくれて、色々な仕事をさせてくれて、今思うと働かせすぎな感じもするけれど、当時編集未経験の俺に給料を払うっていうことはものすごく投資してくれていたわけで。そこで編集者として企画の立て方から取材の仕方、文章の書き方まで身につけることができたので感謝しかないですね。
――今活動されている裏社会のジャンルとビジネス書では、また違うジャンルになるのでしょうか。
丸山 それまでビジネスの世界を通ってこなかったから、ビジネスの世界にもめちゃくちゃ興味があったんです。あと、自分に必要なビジネス書を見つけようと思って、自分で企画を立てて、日本語の本や文法、日本のビジネスマンの本ならなんでもチャレンジして、マナーやビジネススキル、投資の本なんかも全部やって、自分に欲しい知識を専門家にアクセスして本を作ることをずっと繰り返しました。今まで旅とかサブカルチャーしかやってこなかった自分が違う分野も勉強させてもらう。しかも自分が選んだ相手から話を聞くのでどの分野も楽しかった。
ただ、会社勤めをしながら丸山ゴンザレスとしてライターの活動も続けていたから、そっちの方が忙しくなってきちゃったんです。会社ではビジネス書を、丸山ゴンザレスとしては月刊誌『裏モノJAPAN』のライターやアンダーグラウンド、サブカルチャーを毎日行ったりきたりしていました。いい時代だったのでしょっちゅう歌舞伎町界隈とかで朝まで飲んで、寝たら負けだと思ってそのまま出社するみたいな。そのうち個人への仕事が増えてきたので丸山ゴンザレスであることがバレる前に会社を退職してフリーになりました。