大学院卒業後、“ヤバいバイト”を続けていると…
――大学院を卒業した後は、どんな生活になったのでしょうか?
丸山 無職…、日雇いバイトですね。イベント会場や工事現場の内装の片づけ、床張りもやったし、バイト先で出会う連中から紹介された謎バイトもありましたね。面白かったのは、歌舞伎町の雑居ビルで知らないおじさんの話をひたすら聞いて話し相手になるとか、あきらかに総会屋の機関誌だと思われる冊子を縛ってひたすらゴミ捨て場に持ってくバイトとか。知り合いに頼まれてコインロッカーからコインロッカーにモノを運ぶとか。警察学校の売店に売ってるはず商品を代理出品するなど。他にもアメ横のお店で旧警察制服のボタンを買ってきて、頼まれた人に渡すとか。
とにかくそういう怪しげなバイトばっかりやってたら、どこかから噂になっていたのか、大学でお世話になった恩師が何人かいらっしゃるんですけど。その人が見かねてそろそろちゃんと働きなさいよということで、仕事を紹介してくれました。
――初めての正社員生活が始まったと。
丸山 測量会社でした。考古学の中で測量の技術を使うのでその経験を多少なりとも活かせる、ということで。ただ、僕がやっていた考古学の測量技術と、いわゆる建物とか道路を作る測量士の国家資格を持ってる人たちのレベルの差がありすぎて、入ったはいいけど使い物にならなかったんです。僕ら図面作るときに5ミリくらいは気にしなくて「うん、まぁオッケーオッケー」でしたけれど、彼らは違う。コンマ1ミリ以下の誤差も許さない。結局全然戦力にならなくて下働きみたいな感じで工具を片付けたり、作業車に機材を詰め込んだりしてましたね。
――なかなか現実は厳しいというか。
丸山 ただある日の朝、会社の前で機材の詰め込みをしているときに、たまたま大学時代の同級生が通り過ぎたんです。お互いの近況を話すと友達が向かいの出版社にいるとわかって。そこから一緒にランチ食べに行ったり飲みに行ったりしながら今の仕事の相棒の草下シンヤにも出会うんですけど。その日も彼らと飲んでいるときに、同級生が「こいつ学生時代から金貯めては海外に行く生活をしているんです」と話すと、ちょっと本書いてみなよと。
僕も素直だったし、正直、測量会社もうまくいってないし帰ってもやることないから、何となく本屋に行って旅行記ってこんな感じなんだってパラパラ本をめくってみたんです。文字数を数えて1ページにはこれくらい文字が入るとか、文章自体は論文で書いたことあったけど、そんな感じじゃないだろうな、もう少し読みやすく柔らかい原稿にする必要があるなとか。