事件発覚当初、この店舗では客の男性に恋愛感情を持たせて来店頻度を上げる、いわゆる「色恋営業」が激しいとの報道もあったが、今井被告の受け答えからは、Aさん側からアプローチをした様子は見えてこない。
弁護人「2枠を取ると店外で会える?」
今井被告「はい」
弁護人「被害者からの誘いは?」
今井被告「なかったと思う」
弁護人「映画を見たいとの誘いは?」
今井被告「なかったと思います」
キャンセルや変更が増えていった今井被告に対して、Aさんは<絶対にキャンセルなしだから。前回、理由のないキャンセルでした。キャンセルや変更が多いと店に怒られる>などとメールを送っている。
状況が変わったのは、23年1月に今井被告が<投資に失敗したので財産がなくなった>とキャンセルのメールを送ってからだった。Aさんは<キャンセルが多すぎるので私の方からは予約不可になりました>と返信し、今井被告は、自殺を考えるようになったという。
弁護人「予約が取れなくなってどういう気持ちに?」
今井被告「そのときは自殺しようと考えました」
弁護人「3月7日にアマゾンでナイフを購入していますね」
今井被告「自殺用です」
弁護人「なぜ自殺しようと?」
今井被告「生きる意味がわからなくなって」
Aさんの予約を取れなくなったことと自殺の関連性について明言されることはなかったが、今井被告は購入したナイフを透明のポーチに入れて常時持ち歩くようになった。5月5日の犯行当日も持ち歩いていた。ちなみに、当日は偽名で予約した。しかも、会社から借りた携帯電話からかけている。そのため、受付段階では今井被告だとはわからない。
弁護人「被害者は拒否しているのに、どうして?」
今井被告「もう一度会いたかった」
弁護人「どういう格好で店に?」
今井被告「白い帽子、マスク。白いワイシャツ、水色のズボン。変装しました。エレベーターでは気づかれませんでしたが、降りて部屋に着いた後、気づかれました」
弁護人「どういう態度をされました?」
今井被告「『何回も予約をキャンセルしているのに、よくこれたね』と言われました」
罵倒され、土下座させられ「殺害し、自殺しようという選択にした」
その後、今井被告はAさんに土下座させられたという。そしてトイレに入るとその中で、「被害者を殺害し、自分も死ぬ」か、「理由をつけて、店を出る」ということを考えた。しかしAさんに罵倒され、土下座をさせられたことで怒りがあったためか、「考えて、考えて、結局、殺害し、自殺しようという選択にした」と話した。その後、トイレを出てAさんを殺害した。
弁護人「出血は?」
今井被告「血溜まりがあった」
弁護人「どのくらいの時間、見たままだった?」
今井被告「10分から15分」
弁護人「そのあとは?」
今井被告「自殺を決意した。左手でナイフを持って、首に当てた。しかし、できなかった。その後は、自分でお腹を刺した。痛かったので、なんとかしたいと思った。部屋の中でなんとかしようと思ったができず、部屋を出て、エレベーターのほうへ向かっていると、男性従業員に会いました。その後、意識を取り戻したら、病院のベッドの上でした」
この事件は、風俗店の客が女性従業員に恋した結果の事件なのだろうか。弁護人の「被害者に好意はあったのか?」という質問に今井被告は「ないです」と答え、Aさんへの恋心を否定した。