隙間バイトアプリ「タイミー」がヤバいぐらい良いよな、という話は流通の現場にもたくさん来ていて、最近では暫定採用でも「『タイミー』のメンバーさんになってるなら、スコアを見せてください」って平気で言う会社が増えてるんですよ。
ちなみに、個人情報保護法の観点からも、就職差別の観点からも、第三者である「タイミー」のスコアを採用応募者の子たちに訊いて採用するしないに反映させるのは適法とは言えません。便利だからって、やめましょう。
公正な採用選考の基本
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
中国では国民の信用度をスコア化する取り組みが行われていた
それでも昨今そういうのが横行しているのは「便利だから」では済まない別の問題を孕んでいるからでもあります。やはり、採用する側は「地雷を避けたい」一方、これらのバイトアプリでちゃんと勤め上げるとスコアが上がるのは働く子たちからしても「ちゃんと働けばそれに見合う評価が下される」ことへの緊張感の産物とも言えます。
言われてみれば「真面目に働いていたらちゃんと評価される仕組みがあって、しかもそれが可視化されている」って、いままであるようで無かったなと思うんですよね。きちんと働くインセンティブになるというか。
かねて中国では、ゴマ信用という中国国民(特に都市生活者)の個人の信用度をスコア化する取り組みが行われていて世界的に物議を醸しました。冗談抜きで、誰かがその人を「採点」し、入れる店から買った自動車ローンの金利まで決められかねない超監視社会が専制国家・中国で到来して、みんな震撼しておったわけですよ。
国民の行動が逐一監視され、好ましい行動をしていればスコアが上がる。スコアが上がると予約できる店が増えたり、子どもが入れる学校のグレードが上がったり、買える車や借りられる部屋が良くなり、おカネを借りるときも借りられる金額の上限や金利も変わる。これらは、その国民が「信用できる行動をするか」でスコアリングしているのですから、国家や企業が消費者たる国民を選ぶ客観指標として機能するわけです。
バイトでの働き方が就職にも影響する?
人生さえも左右しかねないソーシャルハックに対抗するため何がスコアに繋がっているのか分からない中で、そういう方向にネット社会が発展するとものすごい相互監視・疑心暗鬼になってしまうのではないかと諸外国から不審の眼をもって見られてきました。サイバネティック監視社会であり、いつも国家権力に監視される恐ろしさ、みたいな文脈はすごくみんな敏感なのも事実です。
にもかかわらず、我が国でも蓋を開けてみたらバイトでの働きがスコアリングされ、それが就職にも左右するぞというのは割と大変なことでもあって、しかしこれらは「タイミー」や転職市場で頭角を現す各社が悪いわけではありません。人材の採用コストは相応に高く、しかも人手不足なのもあって、ハズレを引きたくない採用各社と真面目に働けばひょっとしてスコアが上がってより給料や待遇の良いところへステップアップできるかもしれない働き手との間でクラウドと人工知能の計算量というでっかいブラックボックスを挟んだ暗黙の了解みたいなものがあるのかもしれないのです。