そして見えてくる帰結は…
裏を返せば、技術革新すればするほどに、働き手にとって良くない会社と真面目に働かない労働者が知らず知らずのうちに不利なスコアリングをされ弾かれていく世界になっていくのは間違いありません。それは老舗の派遣会社にはどうしても溜まってしまう「どこに派遣で押し込んでも『この人、働かないし問題だからチェンジ』と言われてしまう労働者」と「誰を派遣しても派遣社員から『あそこでは二度と働きたくないから勤務先を替えてください』と言われてしまう会社」というブラックリストができていく様式美が加速していくわけですよ。
使えない人と問題ある会社が技術によって急速に捨てられていく社会は、生産性を高めるうえでは福音かもしれませんけれども、例えば繊細過ぎる人とか、業界的に忙しいときとヒマなときとの差が激しい会社などは、その人や、その組織自体が問題だとは言い切れないのに「駄目」の烙印を捺されがちです。そして、円安になり外国人労働者がなかなか集まらなくなってきて、いよいよ人手不足で黒字倒産が続発するようになって人材のマッチングこそが事業のすべてという世界になってくると、そういう置き換えの効く程度のスキルの人や、置き換えの効く人をかき集めて回している会社がスコアリング社会の犠牲者となっていきます。
ちゃんと働く人からすれば、真面目に働いていればスコアリングによって報われる社会になって良かったね、どんどんステップアップしていくねという意味では最高に働き甲斐のある経済になっていくのかもしれませんが……そうでない、不真面目で仕方なく働く人や、人件費をギリギリまで削減してブラック職場でゴリゴリ回す企業は低スコアで退場となっていく未来です。共産主義を極めた中国みたいなスコアリング社会の行きつく先が、日本維新の会も顔面ブルーになるぐらいの超絶新自由主義の竹中平蔵的修羅の世界になるというパラドックスが、ここにあります。
人材会社が隙間時間向けのバイト紹介サービスに参入するワケ
そして、昨今では買いたたかれる側の学生バイトで問題となっているのは「バ畜」と言われる週7日仕事を入れられたり直前でシフト入りを強要されたりする状態で、これらはもう明確に違法就労に近い状況になってしまうことも少なからずあります。
特に、時給はバイト並みでしかないのに負わされる責任は社員級というブラックバイト先も続発している中で、長時間労働で休憩時間も与えられない勤務先はどんどんスコアが下がっていってしまいます。また、そういう職場から逃げようとすると、そのバイトの子もスコアを勤務先から下げられてしまうので負の連鎖以外の何物でもないのですが、一度傷ついてしまったスコアを立て直すのはかなり至難の業とも言えます。