大阪府吹田市の放課後デイサービス施設「アルプスの森」で、利用者(16)に暴行を加えたとして、大阪府警は21日、暴行容疑で施設運営会社「ミヤビ」の代表・宇津慎史容疑者(60)、宇津雅美容疑者(65)と社員ら3人を逮捕したと発表した。認否は明らかにしていない。

 同施設で事件・事故が起きたのはこれが初めてではなかった。いまからおよそ1年前、2022年12月16日、大阪府から兵庫県を通る神崎川の中で、9日から行方不明になっていた自閉症のある中学1年生・清水悠生(はるき)さん(当時13)が溺死体で発見されたのだ。

亡くなった清水悠生さん 写真=遺族提供

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「1人でできると思った」

 事故は、障害のある子どもたちが学校の後に通う放課後等デイサービス「アルプスの森」(大阪府吹田市)の利用中に起きた。

 学校から施設までの送り届けの際、悠生さんが送迎車を降りて施設に入ろうとしたところ、外へ飛び出し、行方がわからなくなってしまった。そして行方不明になってから1週間後、悠生さんは施設から150m先の神崎川で発見されたが、すでに亡くなっていたのだ。悠生さんが自閉症の特性として水に強い執着を持っていたことは施設側も把握していたが、悲劇が起きる前に発見できなかった。

 事故は防げなかったのか。悠生さんの母親・亜佳里さんは次のように話す。

「自閉症の特性は人によって千差万別です。悠生の場合は主に、会話が苦手、多動、危険認知がない、水に対する強い執着といった特性がありました。

 3歳で自閉症と診断された悠生は、手をつないでいても、パッと離してしまったり、衝動的に動くことがあったので、施設との話し合いのなかで、飛び出しの衝動を抑制するために、送迎時には添乗員2名体制で対応してもらうように取り決めがなされていました。もちろん、それ以外の特性についても伝えています。悠生に合わせた個別支援計画書もありました。

 保護者と施設で交わした支援の内容は、障害児にとっては命綱です。しかし、約束は守ってもらえていなかったんです」

 事故後の吹田市の調査で、悠生さんの送迎時の支援を日常的に添乗員1名で対応していたことが明るみに出たのだ。事故を起こした当該職員は2名体制をとらなかった理由について、「1人でできると思った」と話している。