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「来ないでください」と言われたほうがましだと感じる現状

 私は施設から一方的に『来ないでください』と言われたとき、怒りを覚え、同時に世の中から受け入れてもらえない寂寥感に打ちひしがれました。しかし今になって思えば、無責任な仕事をする施設に子どもを預けて亡くしてしまうのであれば、『来ないでください』と言われたほうがましだったのかもしれないとすら思います」

 近畿地方在住で、子どもが小学校1年生から13歳になった現在まで放課後等デイサービスの利用を続ける吉村美智子氏(仮名)の話だ。

 共働きのため、子どもの就学と同時に預け先を探したが、自閉症で重度の知的障害がある吉村氏の子は、どこの学童保育からも断られて入れなかったという。そしてたどり着いたのが、障害を抱える子どもが自立した日常生活を送れるよう、支援を行う放課後デイサービスだった。しかし、施設の対応に不信感を抱くことは少なくないという。

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「一例ですが、通所し始めてすぐに、施設の扉が無施錠で、うちの子が抜け出してしまうという事件があったんです。結局、裸足で歩いているのを不審に思った通行人が通報してくれたおかげで、施設から1キロほど離れた場所で保護されました。

 無事だったのは良かったのです。ただ、このことについて連絡があったのは、うちの子がいなくなった時点ではなく、すべてが終了した後というタイミングで、こちらがことの重大さを伝えるまで、真剣には取り合ってくれませんでした。その際、スタッフの知識不足、認識の甘さを感じ取り、施設に不信感を覚えたのは言うまでもありません。

「アルプスの森」に入所していた清水悠生さん 写真=遺族提供

 さらに数年後、送迎の際に運転手が運転中に受信したメールに気をとられ、そのまま送迎車ごとガードレールにぶつかるという事故がありました。子どもは額に数センチに及ぶ傷を負い、数針を縫い、CTなどによる脳の検査も行いました。

 金のネックレスをジャラジャラつけて謝罪に来た運転手の横で、施設側の責任者が土下座している異様な光景を今でも覚えています。

 この事故のときは、うちの子を含む障害児3名が乗っていました。障害児は健常者であれば問題にならないような、さまざまなことが問題になり得ます。たとえば、シートベルトの締め付けを極端に嫌う子もいますし、シートに座って背中に汗をかくと不快に感じるため、体温調節に気を使わなければならない子もいますし、衝動に身を任せて動く子もいます。注意すべきことが個々で異なる障害児を複数乗せて、そこに運転手以外に大人が誰も乗車していない状況はかなり危険です。この事故の後に施設と改善策を話し合い、今後は添乗員を2名ですることなどを取り決めました」