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脅迫状が届いたり、自宅前に動物の死骸が捨てられていた

――一方、『ニュースステーション』成功の裏で、視聴者から生死に関わるような脅迫を受けていたそうですね。

久米 僕がはっきりとした物言いをしていたこともあって、番組宛に苦情の電話が来るのは日常茶飯事でした。テレビ局や事務所に「殺してやる」と書かれた脅迫状が届いたり、自宅の玄関前に動物の死骸を捨てられたりしたこともあります。

 1987年には、朝日新聞阪神支局が襲撃されて、報道記者2名が殺傷される事件が起こりました。当時、事件の報道を見ながら「自分もいつ殺されてもおかしくない」と思っていました。

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――著書の中で、「『ニュースステーション』を始めるときに、殺される覚悟をした」と書かれていましたが、怖くはなかったのでしょうか?

久米 怖かったですよ。でも、殺されるのを怖がって、言いたいことも言えない番組にはしたくなかった。そのためにも、殺される覚悟は必要だと思っていました。結局、79歳まで生きていますけどね。

写真はイメージ ©iStock.com

やすしさんと飲んだ日以上に怖い思いをした日はない

――その覚悟は、『久米宏のTVスクランブル』で一緒だった横山やすしさんの影響もありますか? やすしさんは、「殺されてもいい」覚悟を持って人前に出ていたそうですが。

久米 あるかもしれません。やすしさんは生放送で言っちゃいけないことを言う。番組の途中でトイレに立ち、そのまま戻ってこないこともある。そもそも、スタジオに現れない日もある。そんな破天荒な人と一緒に番組をしていたから、怖いもの知らずにはなりました。

 それに、これまでの人生で、やすしさんと飲んだ日以上に怖い思いをした日はないんです。

――何があったのでしょうか。

久米 やすしさんは酔っ払うと、顔が青くなる人なのです。青くなった彼が、「何こっち見とんねん?」と周りの客に絡むんですよ。しかも、わざわざ血の気の多そうな人を選ぶ。それを7、8軒繰り返すんです。「このままでは、やすしさんが誰かに殺されてしまう」と怖くなりました。

 後日、やすしさんが所属していた吉本興業の方にその話をしたら、「よく一緒に行きましたね。今の大阪で、あの人と飲む人なんていないですよ」と言われて。先に教えてくれと思いましたよ(笑)。