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SNSで誹謗中傷する人は、無意味に相手を責めて、自分を正当化ししている

――最近では、SNSを介した誹謗中傷が問題になっています。状況は異なりますが、多くの誹謗中傷や脅迫を経験してきた久米さんは、この状況をどう見ていますか?

久米 僕はSNSどころか、スマートフォンもうまく使えません。iPhoneの最新型を持っているのに、電話に出るのがやっとなくらいです。だから、SNSで誹謗中傷する人や、それに苦しむ人の気持ちを理解しきれない部分もあるかもしれない。

 でも、僕はもしかすると、人間は他人を責めないと生きられない悲しい生き物ではないかと思っているんです。自分が生き残るために、他人をいじめるんですよ。それは今も昔も変わらないし、誰もがいじめる側にもいじめられる側にもなり得ます。

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 夫婦などの身近な存在でも同じです。僕はよく妻と喧嘩をするのですが、喧嘩している最中にふと冷静になると「なんでこんなことをやっているんだ」と思う。無意味に相手を責めて、自分を正当化しようとしている。

――つまり、いじめられる側は「自分が悪いからいじめられる」と思って辛くなるかもしれないけど、いじめる側は自分を守るために攻撃しているだけで相手は誰でも良い、と。

久米 自分が救われるなら、いじめる相手は誰でもいいし、理由なんてなんでもいいんですよ。自分を守るための便利なツールとして、相手を誹謗中傷するんです。いじめられている人は、ある意味いじめっ子にとってのイエス・キリストのような存在ですよね。無条件に相手を救っているのですから。

――誹謗中傷する理由を知ることで、悩みは解決しなくとも「人間はこんなもんだから」と割り切れるようにはなるかもしれないですね。

久米 そう考えるとほんの少し楽になるかもしれない。まあ、僕も79歳になってその境地に至ったので、なかなか難しいとは思いますけど。

久米宏さんの著書『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』(朝日文庫)

すごい方たちと立て続けに、濃密な仕事ができたアナウンサー人生

――79歳になった今、ご自身のアナウンサー人生をどのように捉えていますか。

久米 TBSに入社して約3年間は、体調不良で電話番ばかりしていました。回復した頃に、憧れだった永六輔さんに声をかけていただいて、『永六輔の土曜ワイドラジオTokyo』に出ることができた。そこから萩本欽一さんや黒柳徹子さん、横山やすしさんといった方々に出会って。こんなすごい方たちと立て続けに、濃密な仕事ができた人間は、僕くらいだと思います。

 最初の頃は番組を何本か潰して「番組つぶしの久米」なんて呼ばれたこともありましたけど。『ぴったしカン・カン』以降は順調でした。『ザ・ベストテン』は空前絶後の大ヒット番組になって、今でもあれだけ成功した歌番組はないと思います。『ニュースステーション』も奇跡的に成功させることができた。そう考えると、僕は本当に運がよかったんです。

――最後に、最近のニュース番組について思うことがあれば聞かせていただけますか。

久米 ニュースは今もよく見ています。ただ、ノーコメントでお願いします(笑)。