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《独占インタビュー》「ダイレクターと吉田孝行監督の功績」

 優勝セレモニーが終わった後、三木谷はピッチ裏の通路で短時間、単独インタビューに応じた。

――まずはおめでとうございます。ちょうど10年前にプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが日本一になって、今度はJ1神戸が出資から20年目で頂点に立ちました。それぞれの感想は。

三木谷 嬉しい、という意味ではどちらも同じですよ。神戸も東北も震災でみんなが苦労した街だから、人々を元気づけることができたのは意味のあることだと思います。神戸は自分が子供の頃から世話になった街だから、恩返しができた、という気持ちもありますね。

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――先ほどのスピーチで、J2に降格した時、お父様の良一さんに「こんな時だからこそ、表に出ろ」と言われたエピソードがありました。あれは1度目、2度目どちらの降格の時ですか。

三木谷 1度目の時です。スタッフは「会長が出ると物議を醸すから、もう出ないでください」と言ってきたのですが、親父は「こんな時こそ、会長のお前が堂々と表に出て、しっかり話すべきだ」と。それでサポーターのところへ行った。随分「温かい言葉」をかけていただきましたけど、それもいい思い出です。

――2018年に巨額の年俸でイニエスタ選手などスペインの大物選手を集め、世界最高峰と言われたFCバルセロナ的なサッカーを目指しました。天皇杯は獲得しましたがリーグ戦では結果が伴わず、昨シーズンは降格争いに巻き込まれた。イニエスタ選手がシーズン途中で去った今年、優勝というのは少し皮肉な感じもします。

三木谷 それはまあ、全部がうまく行ったわけではない。でもイニエスタやビジャという世界的なスター選手を集めたことで、「あのチームはなんか面白そうなことを始めたぞ」「彼らと一緒にプレーしてみたい」と思って神戸に集まってきた選手も少なくない。

 今年は「四天王」なんて言われてましたが、大迫、武藤、山口蛍、酒井高徳という代表経験を持つベテランと、神戸の下部組織から上がってきた若手の力がうまく融合した。とにかくみんなよく走った。それも含めて、イニエスタたちがいてくれた、これまでの時間を踏まえてチームが進化したのだと理解しています。

――マネジメントの観点では勝因はどこにあったとお考えですか。

三木谷 一つは東京ヴェルディの監督として実績のある永井秀樹さんをスポーツダイレクターに迎えたこと。彼のことを悪く言う捏造記事が出たりしましたが、こちらで調べた結果、問題ないと判断しました。シーズンを通して我々の期待を上回る仕事をしてくれました。吉田孝行監督についても、前のシーズンの成績が低迷したので交代を言う人もいましたが、選手の心を掴んでうまくマネジメントしてくれていました。彼らを信じて任せた結果が今回の優勝だと思います。

――苦戦が伝えられてきた本業の楽天モバイルも契約件数が増加に転じています。神戸の優勝が追い風になるのでは。

三木谷 それはどうかなあ。楽天モバイルの調子は確かにいいですよ。来年に向けて、大いに期待してください。そうかあ、さっきの優勝セレモニーで「楽天モバイル使ってください」って言えばよかったですね。

写真:楽天提供