「イニエスタたちがいてくれた、これまでの時間を踏まえてチームが進化したのだと理解しています」
サッカーJリーグは11月25日、ヴィッセル神戸が名古屋グランパスを2対1で下し、Jリーグに加盟した1997年から27年目で悲願の初優勝を果たした。2004年に神戸のオーナーになった楽天グループにとっても苦節20年目でのリーグ制覇。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が独占インタビューに応じた。
勝ち点差は1、勝てば悲願のJ1初優勝
神戸市兵庫区のノエビアスタジアムは2万3000人を超えるサポーターで埋め尽くされた。暫定首位のヴィッセル神戸は、前日の試合で2位横浜Fマリノスが引き分けたため、残り2試合で勝ち点差は1。ヴィッセルはこの試合に勝てば悲願のJ1初優勝だ。8割方はクリムゾンレッド(えんじ色)のユニフォームに身を包んだ神戸サポーターである。
5位の名古屋グランパスも士気は高い。勝てば3位に滑り込み、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場の可能性が開けるからだ。バックスタンドの一角を赤とオレンジのユニフォームを纏ったサポーターが埋めた。
試合はキックオフ早々、ホームで優勝を決めたい神戸が名古屋ゴールに襲いかかる。元日本代表の大迫勇也、武藤嘉紀が体を張り、神戸ユース出身の佐々木大樹ら若手が労を惜しまず走り回る。
試合が動いたのは12分。スローインからのヘディングの競り合いを大迫が足元に納め、絶妙のスルーパスを井出遥也に通した。井出はジェフ千葉、ガンバ大阪、モンテディオ山形、東京ヴェルディと渡り歩き、今年から神戸に加わった苦労人だ。
2分後、今度は佐々木がバイタルエリアに持ち出したボールを外に開いた大迫に預け、大迫からのクロスを武藤がきれいに合わせた。元日本代表同士のホットラインだ。
このまま神戸ペースで進むかと思われたが、30分、相手ディフェンスラインの裏に抜け出した佐々木がゴールキーパーとの1対1の絶好機を逃すと、その直後、前線で張っていた名古屋のフォワード、キャスパー・ユンカーが相手ゴールキックの跳ね返りを受けてセンターバックをするりとかわしゴールに流し込む。
後半はのっけから名古屋ペース。優勝を意識し始めたのか神戸は前への推進力が落ち、何度も中盤を崩される。ミッドフィルダーの井出がたまらずファールで相手を止め、イエローカードをもらった。
58分には神戸ベンチが動き、井出に代わって怪我明けの山口蛍を投入する。これで神戸のピッチ上には大迫、武藤、酒井高徳、山口と4人の元日本代表が並んだ。
山口の投入で中盤が落ち着きを取り戻し、シュートチャンスが生まれるが、大迫、パトリッキが立て続けに好機を逃す。4分のアディショナル・タイムを含め残りの25分は名古屋の怒涛の攻撃を神戸が凌ぐ展開に。あわや同点のシーンを何度も逃れ、試合終了のホイッスルが鳴ると、神戸の選手のほとんどがピッチに倒れ込んだ。
鹿島アントラーズ出身の大迫以外はほとんど優勝経験がないので、選手もサポーターも喜び方が少々ぎこちないのはご愛嬌だ。