映画の現場で育ってきただけに、撮影のあいまの時間を楽しむすべも身につけている。朝ドラ『純情きらり』に出演中には、《スタジオ前に置かれていたソファーには私がいつも座る定位置があって、撮影の合間も自分の楽屋には戻らず、そこでご飯を食べたり、皆さんとお話ししたり、お昼寝したりしていました》という(『ステラ』2020年7月17日号)。
撮影現場での驚きの行動
今月16日に配信が開始されたNetflix映画『クレイジークルーズ』(吉沢亮とダブル主演)の制作中には、宮﨑が、撮影現場に飲み物や食事を提供するクラフトサービスでアルバイトしていたので、瀧悠輔監督を驚かせたという。
これについて配信記念イベントで本人が明かしたところによれば、クラフトサービスが本当に豪華で、スタッフも出演者もそこへ行くとホッとひと息つけて、エネルギーをチャージできる場所になっていた。その感動から、自分の撮影がない日を見つけ、クラフトサービスのスタッフに“弟子入り”すると、借りたエプロンに「あおい」という名札をつけて、フルーツやちゃんこ鍋の材料を切るなどしていたらしい。宮﨑いわく、同作の撮影のなかでも《それが結構一番幸せなくらい、幸せな思い出として残っています》(「WEBザテレビジョン」2023年11月13日配信)。
先の渡辺謙との対談で、宮﨑は《以前は、とにかく仕事が楽しくて、みんなでいいものがつくれたらそれでいい、と思っていましたが、今は、自分がこの現場でどんな役割を果たすべきなのかな? と考えるようになりました。かといって、場を盛り上げたり、楽しくさせたりすることができるわけじゃないんですけれども》と語っていた(『婦人公論』前掲号)。
しかし、クラフトサービスのバイトをしていたという話を聞くと、いまや彼女は場を盛り上げることにもちゃんと貢献しているように思われる。演じるだけでなく、さまざまな役割を自ら見つけ出しては担いながら、現場を引っ張っていく。30代後半に来て、人生経験も重ねながら、宮﨑あおいはそんな域に達しつつあるようだ。