当たり前のことですが、僕は息子を心から愛しています。ロンドンではオムツや食事の世話などもずっとしていました。でも、そんな可愛い息子を奪われてしまい、すでに4年以上も会えていないどころか声も聴けず写真すら見せてもらえない。
息子はもう9歳。ひょっとすると、僕との想い出、記憶も薄れているかもしれず、なぜ自分が父親のいない生活を送らされているかも知らないままかもしれません。だから、息子のために、息子を取り戻すために、僕は断固として闘うことにしたのです」
息子を奪われ、離婚に追い込まれ、ミツカンを放逐されてしまった大輔氏は、2つの裁判を起こした。1つは、義父母であった和英会長、美和副会長を相手取った精神的苦痛による3000万円の損害賠償請求訴訟。もう1つが、冒頭で触れた対ミツカンの1億円訴訟だ。
判決に耳を疑い、悲鳴にも似た叫び声をあげた
前者の訴訟は今年2月に敗訴した。東京地裁判決では「次女は中埜家の家風や価値観を大事にする考えを持ち、子が生まれた場合は両親と養子縁組させる可能性があると、婚姻前から大輔さんに説明していた」と指摘。次女は離婚する意思があったとして「前会長夫妻が強要する必要はなかった」と判断した。大輔氏はその後控訴したが、11月の控訴審でも敗訴している。
そのため後者の判決に望みを託していたが、冒頭で触れた通り完全敗訴だった。
法廷内にどよめきが流れたのには理由がある。
大輔氏がロンドンで妻子との別居を命じられたあと突如関西の配送センターに配転され、それが不当であるとする仮処分の申し立てが認められたことはすでに触れた。
今回敗訴した訴訟は、この仮処分決定を受けてのいわば本訴であるため、当然、仮処分の認定に沿った判断が下されると大輔氏自身も支援者らも信じていた。だからこそ、判決に耳を疑った。「ええええーーーーーっ」。裁判官が退廷した直後に悲鳴にも似た叫び声をあげた大輔氏が改めて言う。