あだん堂 「練習しましょう」と言われて、まずは改札まで行くところから始めて。そこから駅に入ってNewDaysかなんかで買い物できるか、ホームに上がれるか、電車を見る事ができるか……そういうことを重ねていって。気分が悪くなったりまったくできない日もあったけど、ひとつずつクリアしていきましたね。2021年の1月末あたりで、電車のそばまで近づけたので記念写真を撮りました。
ーー現在、PTSDは。
あだん堂 2022年の春に、完治しました。侵入、過覚醒、回避症状というこの3つなんですけど、これが完全になくなって完治とのことでした。事故に遭った記憶はあれど、ほとんど事故の前と同じように生活できるかが、一番の診断基準になってるみたいですね。
事故を通して人間関係にも変化が
ーー京急は医療費以外にも補償を。
あだん堂 生活費の補償もしてくれましたね。年収の何割みたいな感じで。ほんと京急さんは良くしてくれて、「どれだけ治療に時間が掛かろうとも、その間は弊社が責任を持ちますので」というスタンスなので、ものすごく気が楽で。
「京急なんて大きい保険会社に任せてるんだから、対応がいいのは当たり前じゃん」とか「お金もらえるから、治りませんって言い張って引き伸ばしてたらいいんじゃない?」とか言う人がいましたけど、「私は普通の生活に戻りたくて、一生懸命治療をしているんだけどな」って。
ーー他に言われて嫌な言葉ってありましたか。
あだん堂 「神様が与えた試練だったんだよ」とか。「じゃあ、あなたも同じような試練に遭ってください」みたいな。
「あなたは選ばれて事故に遭ったんだよ」とか「それぐらいで済んで良かったじゃん」とか「酒が飲めるなら大丈夫でしょ」とか。そういう言葉を通して、人間関係もだいぶ変わったところがあります。
ーー現在、京急からの補償はどういった段階にありますか。
あだん堂 最終調整に入っていて、お願いしている弁護士さんと先方がやり取りしています。完全な完治という診断を基に、向こうの保険会社さんがいくら払うかみたいな話になってるみたいで。
今年から同人誌の編集として本格的に始動
ーー会社のほうは。
あだん堂 完治したタイミングで辞めました。2022年の10月に復職して半年ほど働いたけど、コロナを経てシステムや営業成績の付け方が変わっちゃっていて、いろいろしんどくなって。当然、ブランクもあって契約も取れなくて、翌月か翌々月にクビになるなと察して「これ以上は迷惑かけられないから辞めます」と。
ーー現在の同人誌の編集は、保険会社を辞めてから始めたのですか?
あだん堂 私はもともと編集者で、その頃に万年筆文芸部って社会人サークルを立ち上げたんです。万年筆が好きで、万年筆で著述することが好きな人たちを集めたサークルで。そのサークルの人たちから「編集やってくれない?」って言われて、必要経費だけもらって編集をやってたんです。