2019年9月5日、11時43分頃。京浜急行の下り快特電車が、神奈川新町の踏切内に侵入したトラックと衝突し、1両目から3両目までが脱線。トラック運転手が死亡し、電車の乗客乗員77名が負傷した。
この京浜急行衝突脱線事故の事故車両1両目に乗車していた、フリー編集者のあだん堂ゆきさん(32)。
事件から5年。彼女に、線路に出たものの混乱するなかで助けてくれた人々、規制線内でのパートナーとの再会、救急病院での検査などについて、話を聞いた。(全3回の2回目/続きを読む)
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会社にはパートナーに連絡してもらった
ーー線路から出た後はどこへ?
あだん堂 事故現場に集まってきた女性がお茶をくれて、電話しても家族が出なかったと男性にスマホを返している私を見て「うちの会社、ここから近いから電話していいよ」と申し出てくれたので、その方が事務員をやられている会社に行きました。
ほんと、10メートル先に会社があって。そちらの社長さんが、事故に遭った人たちに会社を開放していいと連絡してきたそうなんです。そこには事務員の方がもうひとりいて、おふたりにはめちゃくちゃお世話になりました。
そこで固定電話を借りてパートナーにかけたけど、なかなか出なくて。何度目かでやっと繋がったと思ったら、「ごめん、うどん茹でてたわ。どうした?」ってのんきな感じで。でも、すっごい安心して、また大泣きしちゃって。まだ事故の報道が出ていなかったし、私の発言も支離滅裂だし、ようやく状況を理解したときにはめちゃくちゃ驚いてました。電話が繋がったときって、事故からまだ15分くらいしか経ってなかったんですよね。「じゃあ、迎えに行くから」と言ってくれて、その会社で待たせてもらうことにして。
それとパートナーには、私が会う予定だったお客さんの名前を教えて、会社に連絡するようにも頼みましたね。
119で救急車を要請
ーーそこで脱線事故の報道は見ましたか。
あだん堂 電話して、しばらくしてから待たせてもらっているオフィスのテレビでニュースを見ました。それから、まだ事故があったという情報と一緒にTwitter(X)からの映像や写真がすこし出てるくらいでした。でも、すぐにマスコミが来て、線路沿いにうじゃうじゃ集まっているのが見えて。すでに規制線も張られてたんだけど、マスコミが集まってきて、規制線とか警察官の制止とか無視して入り込んじゃってるって、事務員さんたちが話してるみたいでしたね。
事務員の方がニュースを見て「あんな大変な事故だったんだから、救急車に乗んないと」って心配してくれて、規制してる警察官に聞きに行ってくれたんです。「救護所が設置されて、そこに救急車が40台くらい停まってるから、歩けるならそこに行って」とのことだったんですけど、出ていったらマスコミに捕まるんじゃないかって。で、事務員さんが119で救護所の救急隊とは別で隊員さんを呼んでくれて「異常なし」と。