SIMI LABのメンバーとして、また、『高校生RAP選手権』の審査員としても知られるラッパーのMARIAさん。米軍基地で育ち、複雑な家庭環境や「ハーフ」というルーツに葛藤を抱えたこともあるという彼女は今年4月、母となった。
新たなステージに入ったMARIAさんに、子育て中の現在からラッパーを目指した原点まで、話を聞いた。(前後編の2本目/最初から読む)
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「私、年金未払いの月はないですよ」
――MARIAさんって就職とか、会社で働いたことはあるんですか。
MARIAさん(以降、MARIA) 一度ラッパーを諦めてアラスカに行った時は、アパレルで働きました。求人がどこに載ってるかわかんないんで、モールの中の店をかたっぱしから当たって、「日本から来て英語下手なんですけど仕事ないですか?」って聞いて回って。
――すごいガッツですね。
MARIA そしたらアパレルの店をやってるヤンジュっていう韓国人のボスが、「日本人めっちゃ好きだよ。仕事真面目にするし時間守るし」と言って雇ってくれたんです。ヤン、会いたいですね。
――MARIAさんが企業で働くイメージがなかったので、ちょっと意外でした。
MARIA そんなことないですよ。アラスカから帰ってきてお金稼がないとな、と思ってた時にちょうど「消えた年金問題」が起きて。それで、社会保険庁の業務委託の仕事をしたことがあったんです。で、年金の勉強をメッチャさせられて、「国民年金より厚生年金のほうがめっちゃお得じゃん。厚生年金は絶対納めなきゃダメだ」となりました。
その勉強のおかげで私、年金未払いの月はないですよ。周りの子にも、「マジで年金は払ったほうがいい」っていつも言ってます。
――若い時から将来の備えをされていたんですね。
MARIA 今は子どもの学資保険を選んでる最中です。2つまで絞ったので、あとは決めて手続きするだけですね。
――年金や子育てのことはラップのテーマになりますか。
MARIA 自分の中では、ヒップホップの中に福祉は含まれてないというか。私にとってのヒップホップって、逆境に負けないとか、クラブでケツを振るものだったり、強い酒飲んでフワッとして飛んでっちゃうような気持ちとか、愛とかを表現するものなんですよね。だから、子どもへのメッセージはあり得るかもしれないけど、福祉はないかもしれないですね。