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日本人ウケしない自分は「外に出せない存在」

――『高校生RAP選手権』で審査員をされるなど、人気と実力を兼ね備えた今も壁を感じるんですね。

MARIA ただ、今は子どもができてタコになっているので(前編参照)、その壁を壊す必要が果たしてあるのかどうか、という気もしてて。それに、不思議なもので、やっぱり音楽を聴くと「ああ、ここが私の帰る場所だ」ってなる自分もいるから、やめられないなあ、と。

 あと、窮屈な思いをしたのは恋愛もそうですね。「私は日本人男性が求める女性としてはフィットしないんだな」というのはありました。

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――黒髪で三歩下がるような女の子が好かれやすい、みたいな?

MARIA 日本での「愛され女子」みたいなのって、化粧もすっぴん風だったりとか、あるじゃないですか。でも私は常に三歩出てるし、メイクだってめちゃくちゃしますし。

 鼻ピアス開けて髪はブレイズでドジャースとか着てブリンブリンだった若い時に、当時の彼氏から「そういう格好はやめた方がいいよ」と言われたことがあって。

 

――おとなしめの格好を求められた?

MARIA そう。その時は私も若かったから軌道修正して、ちょっとギャルっぽい格好にしたんです。そうしたら「重すぎる」って言われてフラれたんですよ。私のヒップホップ文化奪っておいて、ねえ。

――それはキツいですね。

MARIA 若い時の私がつらかったのは、「これが俺の彼女だよ」って堂々と紹介してくれない人が多かったことで。皆たぶん、細くて女の子らしい彼女を紹介したかったんでしょうけど、それが窮屈だなと思ってました。

 日本人ウケしない自分は外に出せない存在として扱われたわけですけど、その一方で、下品な話ですけど、「お前、いつも私でテッペンいってるくせに」と思って、相手の男をダサいなって思ってましたね。

「みんながいたから私は自由になれたよ。ありがとう」

――そんな中で、SIMI LABのメンバーや現在のパートナーといった、互いに認め合える男性との出会いもあって。

MARIA 「こんなに太って大丈夫かな」と言っても、夫はいつも「健康的には体重は減らしたほうがいいだろうけど、かわいいから大丈夫」って返してくれて。内面も見た目もひっくるめて私を評価してくれる彼のおかげでいつのまにか周りが気にならなくなって、自由になれたんですよね。

『Set Me Free』って曲を出してるんですけど、「みんながいたから私は自由になれたよ。ありがとう」って思いを込めてるんです。

 

――最後に改めて、ヒップホップへの思いを聞かせてください。

MARIA ヒップホップ、ラップは私にとって救いであって、自分の音楽も誰かの救いになるものでありたい、というのは変わらないですね。で、クラブもあいからず好きなので、みんなで楽しめる音楽っていう部分でも貢献できたらいいなと思いますね。

 課題は、タコの母さんになってしまったせいか、エロからかけ離れ過ぎていること。セクシーな気持ちはいくつになっても大事だと思うんで、そこは取り戻したいですねえ。

写真=杉山秀樹/文藝春秋