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野球選手のセカンドキャリア「元プロのプライドが邪魔だった」…元甲子園優勝投手が「お茶売り」として再び輝けたワケ

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JR東日本野球部時代の山口裕次郎さん(写真提供=JR東日本野球部)

しかしドラフト会議当日、日本ハムから6位での指名を受けた。「家に帰る直前に6位指名を伝えられました。まさかという感じでしたね」。山口さんは熟考の末、日本ハムに断りを入れ、社会人球界からプロを目指すことを選択したが、フォームを崩し、本来の投球を見失ってしまう。結局、プロはおろか、アマ最高峰の大会である都市対抗野球大会での登板も果たせないまま、夢半ばで静かにグラブを置いた。

山口さんより一つ上の順位となる日本ハム5位指名の高山優希投手(大阪桐蔭高)は、契約金3000万円、年俸520万円(金額は推定)で入団。ただ、プロ6年間で一度も1軍のマウンドに上がることなく、山口さんと同じタイミングで球団から戦力外通告を言い渡された。もし仮に山口さんが日本ハムに入団していれば、同じ高卒左腕の高山さんより低い条件からスタートしていることになる。

「夢」と「安定性」を天秤にかける選手たち

同学年の山本由伸投手(宮崎・都城高)はオリックス4位指名ながら、日本を代表するエースへと成長。ポスティングシステム(入札制度)を利用して移籍を目指すメジャーリーグでは、数百億円規模の契約が予想される。

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ドラフト順位に関係なく、活躍によって年俸は青天井で上がっていくが、そういった選手は一握りの世界。そもそも、1位と6位では、契約金や年俸から差をつけられ、与えられるチャンスの回数も違ってくる。山口さんのように、プロで夢を追うよりも、日本の大企業であるJR東日本に入社したほうが、将来の安定性という点でははるかに上だろう。

今年のドラフトでは、高校通算62本塁打の真鍋慧(けいた)内野手(広島・広陵高)、東京六大学リーグの名手・熊田任洋(とうよう)内野手(早稲田大学)が3位までの順位縛りをした。結果的に2人とも指名されることなく、真鍋選手は大学進学、熊田選手はトヨタ自動車に進むことを表明している。来年以降も、自らの将来の“保険”として、順位縛りをする選手が一定数出てくることが予想される。