文春オンライン

親の選んだ相手とお見合い結婚なんて、今どきアリ? ロンドンで恋愛と結婚を問う『きっと、それは愛じゃない』

2023/12/14

source : 週刊文春CINEMA 2023冬号

genre : エンタメ, 映画

note

結婚は文化のギャップに振り回される

 私の両親は見合い結婚である。母の一方的な証言からすると、許嫁との結婚を断った代わりに行かされたお見合いで、向かいに座ったのが我が父。「この人とはないな」と思ったのにもかかわらず、あれよあれよと話が進み、次に会ったのが結婚式だったという。

豪華絢爛なパキスタンの結婚式は映画の見どころのひとつ ©2022 STUDIOCANAL SAS. ALL RIGHTS RESERVED.

「父さんが嫌な奴だったらどうしたの?」と尋ねると「ひいおじいちゃんが『相手のお父上は立派な人だから間違いない』って言ったからね」と母。元警察署長で真面目一筋の父方の祖父。そこから息子である父の人柄は透けて見えたのか。その冒険で私も存在しているわけだが、母のような勇気は持てない。私もゾーイと同じく、カズの結婚はかなりのギャンブルに思えてしまう。

カズの結婚相手は22歳で、登場する誰よりも現代的 ©2022 STUDIOCANAL SAS. ALL RIGHTS RESERVED.

彼女が辿る道は幸せへ近づいていくのか

 10年前、私がイギリスに住んでいた頃も様々なバックグラウンドを持つ人たちに出会った。今はあの頃よりずっと多様性を認め合うことが意識されているはずだし、そういう社会だからこそ、主人公たちは結婚という一大事において文化のギャップに振り回されるのだ。

ADVERTISEMENT

 揺れるゾーイの、正直で繊細な表情は胸に刺さる。「それが愛なのか」と彼女が辿る道は、幸せへ近づいていくのかを見届けてほしい。

INTRODUCTION
マッチングアプリやSNSなど出会いの選択肢が無限にあって、何が幸せへの道になるかわからない──そんな悩みを抱える現代人への「恋愛と結婚と人生のトリセツ」となる作品。プロデューサーは『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』『ラブ・アクチュアリー』のティム・ビーヴァン。監督を『エリザベス』のシェカール・カプールが務め、ヒロインを『ベイビー・ドライバー』『シンデレラ』のリリー・ジェームズが演じる。

STORY
ロンドンでドキュメンタリー監督として活躍するゾーイ(リリー・ジェームズ)は恋愛ではダメ男を好きになって連敗ばかり。仕事も行き詰まりそうなとき幼馴染の医師カズ(シャザド・ラティフ)に再会し、パキスタン出身で信心深い家族のために見合い結婚をすることになったと聞いて驚く。なぜ今時? と疑問を抱いたゾーイは、カズの結婚までの道のりを次回作の題材として追いかけることに。愛がなくても結婚できるのか、理想の人に巡り会えるの か──。異文化の結婚を見届けたゾーイがたどり着く答えとは。

STAFF & CAST
監督:シェカール・カプール/出演:リリー・ジェームズ、シャザド・ラティフ、シャバナ・アズミ、エマ・トンプソン、サジャル・アリー/2023年/イギリス/109分/配給:キノフィルムズ/12月15日より全国公開

親の選んだ相手とお見合い結婚なんて、今どきアリ? ロンドンで恋愛と結婚を問う『きっと、それは愛じゃない』

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春CINEMAをフォロー