北朝鮮で「キム・ジュエ」と呼ばれる金正恩総書記の娘の存在感が増している。父娘は11月30日に行われた航空節の記念行事にもそろって登場した。韓国大統領室の趙太庸国家安保室長は12月3日のテレビ番組で「後継者として検証しなければならないのではないか」と発言した。
ジュエ氏は正恩氏の長女で2013年1月生まれとみられる。まだ10歳の女の子が後継者としての地歩を固めつつある背景には、父・正恩氏の母親への思いと自身のつらい過去がある。
派手な服装が意味するもの
昨年11月以来、公式に確認された計19回に及ぶジュエ氏の動静を追うと、いくつかの事実が浮かび上がる。第1は頻繁に変わる華麗な服装だ。
昨年11月18日に初めて登場したときは白いダウンジャケット姿だった。今年2月には、スーツ姿で両親や軍高級幹部に囲まれた。先月、航空節に現れたジュエ氏はワインレッドのレザーコートにサングラス姿だった。
北朝鮮では、目立つことが死につながるケースがままある。派手な服装は、周囲に「不正を働いている」と疑われ、政治的に密告される危険があるからだ。経済的に困っていない高級幹部たちが同じ人民服などを着ているのはそのためだ。
逆にみれば、ジュエ氏の華麗な服装は、人々の記憶に残ることを意識している。北朝鮮を逃れた元朝鮮労働党幹部は、一連のジュエ氏の登場について「国民に後継者の存在を認知させることが目的だろう」と語る。元幹部によれば、権力を継承する作業にも色々ある。