しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。
「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」
それを聞いたX先生はこう言った。
「そのことと違う。もう一回考えておいで」
X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。
「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」
実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった
翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。
「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」
だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。
同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。
A子「(無視しようと)言ったならごめん」
B「聞き間違っていたらごめん」
X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。
その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。
学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。
同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。