前者の本場系は、インド料理店全体の割合から言えば一部に過ぎませんが、カレーの多様化という意味では極めて大きな貢献を果たしています。本場インドのカレーには無限と言ってもいいくらいのバリエーションがあり、その中にはこれまで一切日本には紹介されてこなかった、言うなれば日本人にとってのカレーの概念を大きく逸脱するものがたくさんあります。いや、現地ではむしろそちらの方が多いと言っても過言ではありません。
定食スタイルのカレーが登場
移民の増加に伴って、インドだけではなく、ネパールを筆頭に、スリランカ、パキスタン、バングラデシュなど南アジア各国の、これまで日本人にとっては未知であったカレーやビリヤニなどのスパイス料理に出会える機会もまた、かつてないほどに増えています。
日本人でそういったものを積極的に求めるのはまだまだ一部の人かもしれませんが、これは日本におけるカレーの多様化に大きく寄与していると言えるでしょう。こういう「カレーらしくない本場のカレー」の代表格が、南インドからやってきた「ミールス」と呼ばれる定食スタイルのカレーです。また最近では、それより幾分カレーらしさの強いネパールの「ダルバート」も、急速にその認知を高めています。
ブームを超えてすっかり定着した「スパイスカレー」
多様化という意味で忘れてはならないのは「スパイスカレー」という存在です。スパイスカレーとは何かを定義することはなかなか難しいのですが、その中心にあるのは、インドなどの南アジアのカレーにルーツを持ちつつも、あくまで日本人が日本人のために生み出した日本のカレーである、と言えると思います。
ですので、本場系のインドカレーとは少し違い、スパイスカレーは従来のカレーライスとは一定の距離を置きつつも、日本人にとっても間違いなくカレーと認識できる外縁のギリギリを慎重に狙っているように感じられます。そういうある種のとっつきやすさと新しさが共存しているためか、10年ほど前からスパイスカレーはブームとも言われ始め、今ではブームを越えてすっかり定着しつつあります。