文春オンライン

2024年の論点

ニュージーランドから見た、いつまでもアップデートされない日本の教育《楽しいよりも頑張ることが大切、は正しいのか》

ニュージーランドから見た、いつまでもアップデートされない日本の教育《楽しいよりも頑張ることが大切、は正しいのか》

2024/01/13

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 国際

note

 ニュージーランドに移住したのは2006年、もう17年以上前のことです。若い頃にラグビーチームの遠征で訪れて以来、ずっとこの国に住みたいと思っていました。大学卒業後はアメリカの投資銀行に長く勤め、ロンドンやニューヨークにも暮らしていましたが、人の優しさに包まれているニュージーランドでの生活は本当に素晴らしいものと日々感じています。

日本とニュージーランドの教育の大きな違い

 現在、私が運営しているリアルニュージーランドは、日本からの留学生のお世話を業務としています。彼らの留学生活を通して、ニュージーランド教育の先進性、多様性を間近で感じています。

 住み始めてまず強く感じたのは、とにかく子供の数が多いということです。みんなが裸足で走り回っていて、とても元気そう。それもそのはず、つい最近まで合計特殊出生率は2・0を超えており、社会が活気と元気に溢れています。子供を大切にする社会とは、子育て世代を大切にする社会であるというごく当然のことも強く感じます。

ADVERTISEMENT

筆者提供

 体外受精、助産師等の出産に関係する費用は全て無料で、出産後の子供の医療費、養育費の家庭負担も最小限となっています。

教義的なことは算数、読書、作文のみ

 社会の包容力が大きいと感じるのは、プレスクール、そして小学校の初期教育の場でも同様です。小学校には入学式がなく、5歳の誕生日を迎えた後1年間で、個々の家庭が準備できたと思えるタイミングでバラバラに入学します。

 基本的に、小学校には、教科書も時間割もありません。教室には、教壇も、横並びの机もありません。子供が楽しいと思える空間作りの工夫に溢れています。身に付ける教義的なことは、算数、読書、作文の三つだけです。子供たちは、アートや音楽、自然とのふれあい、遊びを通じて、もっと大切な多くのことに気づきを得て、何よりも大切な「生きていることは楽しい」という感覚をしっかりと芽生えさせ、ゆっくりと育んでいるのです。