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 ニュージーランド教育の現場には、脳科学、教育心理学等の最新の研究結果がいち早く落とし込まれています。その先進性、機動性は、世界でも大変高い評価を得ています。本当の学びのためには、脳(気持ち)がリラックスしている状態が何よりも大切であるという研究結果は、先生方に徹底して共有されています。「楽しい」は決して楽をすることではなくて、子供たちの「学び」を最適化することであると理解されているのです。

ニュージーランドには“受験”がない

 13歳から18歳までの、セカンダリー・スクール(中学高校)においても、教育の指針は変わりません。個々の「やりたい」「楽しい」を尊重すること。そして自分自身の時間、空白の時間の重要性についても学校側が深く認識しています。空白は、自身の今と将来を見つめるために、何よりも大切なものなのです。

 高校最終学年に履修するのは通常は4教科のみ。その中に必須科目はありません。学びたいことだけを学びます。ここでも、「楽しい」が最優先されています。楽しく学べないものは、決して身に付くことはないという理念に潔さまで感じます。

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 個々の学生が、それぞれ好きな分野に集中するので、他人との成績比較など不可能ですし、意味がありません。また、履修教科数が少ないことで、午後3時過ぎの放課後は自分のための自由な時間をたくさん取ることもできるのです。

筆者提供

 ニュージーランドには受験というシステムがありません。高校3年間で履修した学科単位をもとに政府公認のNCEAという大学進学に必要な資格を得ます。NCEAは世界でも広く認められているので、ニュージーランドの大学はもとより、エディンバラ大学、シンガポール国立大学、シドニー大学等の世界の名だたる大学に進学する子も少なくありません。

海外経験を社会全体で後押し

 また、ニュージーランドの社会教育の一つの大きな特徴は「世界は広い!」を常に子供たちに伝えていることです。それを受けて、毎年4万人以上の若者たちがこの国を旅立っていきます。日本にあてはめると毎年100万人以上の若者が国外に流出する規模です。ニュージーランドはそれを危機ではなく、Overseas Experience(海外経験)をOEと称し、社会全体で後押しまでしているのです。