今いる場所がすべてではない、もっと「楽しい」ことが世界にはたくさんあるから、ここを出ていって「体験」してきなさいという強い思いがあります。ニュージーランド人はOEを通じていろいろな価値観に触れ、国内人口の20%にあたる100万人もが世界各地に居住しています。また、たくさんの他国籍の方々を自国に受け入れる、国民の優しさや包括力にも繋がっているのです。
「楽しい」ニュージーランドの教育は「頑張る」日本の教育を上回る
「楽しい」ニュージーランドの教育が、「頑張る」日本の教育を上回っているのではと感じる場面が多くあります。日本では、常に「楽しい」は「苦しい」「頑張る」の向こう側にあると教えられますが、本当なのでしょうか。15歳の基礎学力を測るOECDのPISAテストの結果は、両国ともトップ20内に位置付けられる一方、『エコノミスト』誌が発表する「未来のための教育指数」のリポートでは、ニュージーランド教育のほうが日本よりも遥かに高く評価されています。
また、国の教育施策の長期的結果ともいえる社会経済面を見てみると、一人当たりのGDP、平均所得ともに、すでに2010年ごろには、ニュージーランドが日本を上回る結果になっており、その後は差が広がる一方です。
今後、VUCAと呼ばれる不透明で不確実な時代に直面する子供たちに大切なのは、何よりも自分自身に対するConfidence(自信、信頼)だとニュージーランドは考えています。やらされることを「頑張る」のではなく、自分のやりたいことを見つけ、それに没頭する「楽しい」環境。その中でこそ、広い世界のどんな局面でも、楽しく、強く生きていける人間が育っていくのではないでしょうか。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。