最近よく「これからは『人生100年』時代」って言いますでしょ。エラいことになったなぁ、と私は思うんです。

 医学が発達して平均寿命が延びて、それはめでたいことなのかもしれませんけど、実は夫婦にとっては“地獄”なんじゃないですかね。オーバーな言い方かも分からないけど、それぐらい“しんどい”時代やと思います。

上沼恵美子さん ©文藝春秋

「主人のお墓に連れて行ってほしい」という姑からのお願い

 それで私が思い出すのは姑のことなんです。

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 私が嫁いだとき、最初に姑に言われたのは「週に一回、主人のお墓に連れて行ってほしい」。当時の家から車で20分ぐらいのところに上沼家のお墓があって、毎週、私は車で姑をお墓にお連れしてました。そうすると彼女はいつもお墓に向かって「お父さん、お父さん」と語り掛けるわけです。

 その様子を見て私は「ああ、お義母さん、本当にお義父さんのことが好きだったんだな」と思っていたんですが、今ならわかります。お義父さん、60歳で亡くなっているんです。そのときお義母さんは50歳。それぐらいで死に別れると、美しい思い出のままでいられるんじゃないんでしょうか。残酷な言い方ですけど、この頃、本当にそう思うんです。

呼吸もできなくなるくらい惚れて22歳で結婚

 ウチは2024年で結婚47年になります。

 最初に出会ったとき私は20歳そこそこで主人はテレビ局のバリバリのディレクター。シュッとしていて立ち居振る舞いも外国人みたいにスマート、本当にカッコよく見えたものです。向こうから彼が歩いてくるだけで、呼吸もできなくなるくらい私が惚れて22歳で結婚しました。

 新婚時代、嫌だなと思ったことがひとつだけあって、夫は8歳上なので「将来、私がこの人のお葬式を出さないといけないんだ」と。そう考えると涙が出てきて、寝られへんことがあったんです。今やったら……やめときましょ(笑)。

 で、長男を産んでから1年後に芸能界に復帰して、妻で母でタレントで……と二足も三足も草鞋を履いて、それでも子どもが小さいうちは夫婦はうまく行くもんです。子どもがイジメにあった、進学先はどうする、と日々生じる目の前の問題に夫婦で立ち向かう「共闘関係」にあるからです。

 ところが子どもたちが巣立ち、姑も見送って、何十年かぶりに夫婦2人で向かいあってみると、「はて、このオッサン、誰やったかな?」と思う瞬間が来るものです。