ウチの主人は61歳のときに私に何の相談もなく会社を辞めてきたんですが、最初のうちは「お勤め、ご苦労様でした」なんて毎日乾杯してましたよ。でもそのうち、自分でも笑けてくるわけですよ。「いつまで言わすねん」と。
もっともウチの主人は多趣味というか、退職してから次から次へと色んな趣味に手を出してきました。現役時代からやっていたゴルフは週4で行ってましたし、それからウクレレを始めて、俳句、陶芸、彫刻、絵も描きますし、スポーツ観戦も大好き、読書魔ですから暇があったら1日中、本読んでます。
だから退職後もしばらくは「この人は自分で趣味を見つけて上手に時間を使ってるな」と尊敬もしてたんです。ところがそれだけとっかえひっかえ趣味に勤しんでも、持ってせいぜい10年ですね。やっぱり人間、飽きてくるんです。
ウクレレなんて家と別荘であわせて30本、「ウクレレ漫談」の牧伸二さんより多いんちゃうか、ぐらい持っているんですが、本人は「飽きた」って言うてました。
結局、今、残ってるのはゴルフぐらい。あっ、あと「能面作り」か。先生についてやっているんですが、とにかく勤め人の頃と違って、やろうと思えば24時間使えますんでね。3日あったら1つ彫れます。だから主人の寝室は今、般若やら鬼やらの能面だらけで、気味悪くて入れません。
あるいは趣味の仲間が病気やなんかで来れなくなったり、亡くなったりということもあります。そうやって親しかった人が1人欠け、2人欠け、何となく足が遠のいていく。
夫婦で顔を突き合わせる時間が増えてくると…
そんなこんなで家で夫婦で顔を突き合わせる時間が増えてくると、こっちが参ってしまうんですね。
5年くらい前に、急にめまいがするようになって、蕁麻疹が出るようになったんです。そんな症状を私がどっかで口にしたのが、ある日、安藤優子さんの番組でとりあげられて「上沼さんの症状は『夫源病(ふげんびよう)』ですね」とスタジオにいたお医者さんが仰った。私、たまたま家でその番組を見ていて、「はあ、そうですか」と思わず頷いてしまいました。
「夫源病」なんて失礼な病名だし、主人には申し訳ないんだけど、そうなんだから仕方ない。なぜそんなことになったんやろう、とつらつら考えるに、私は最初、彼を尊敬して、すごい方やと思って結婚したというのが根底にあるわけです。