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 日米韓はキャンプ・デービッドでの首脳会談で、首脳、外相など6つの枠組みで最低年一回、日米韓協議を行うことで合意した。だが、最も力が強い米国がやる気を失えば、「協議の定例化」は霧散する。2008年に始まった日中韓首脳会談が、中国のわがままから、度々延期に追い込まれているのと同じ構図だ。

 日韓両政府は現在、2024年に予想される難局に備え、関係の強化を目指している。当局者の1人は「(韓国総選挙が行われる)4月までが日韓のゴールデンタイム。それまでに、未来志向で日韓関係の重要性を理解してもらえる施策を打ちたいが、なかなか妙案が出てこない」とも明かす。

プノンペンで会談する尹錫悦大統領(左)と岸田文雄首相 ©EPA=時事通信

日韓両政府が最も関心を寄せていること

 日韓両政府が現在、最も関心を寄せているのが安全保障を巡る協力の強化だ。日本が同様に協力を進めるオーストラリアと比較してみても、日韓防衛協力の脆弱性がはっきりわかる。

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 日豪両国の取り決めのなかで、日韓両国にもあるものは軍事情報包括保護協定(GSOMIA)しかない。物品役務相互支援協定(ACSA)も、外務防衛閣僚協議(2+2)も、円滑化協定(RAA)もない。

 尹錫悦大統領は2023年8月に「日本が国連軍司令部に提供する7カ所の後方基地は、北朝鮮の韓国侵攻を遮断する最大の抑止要因」と演説した。だが、肝心の韓国軍は、日本から弾薬を受け取ることも、韓国軍戦闘機が日本の基地に避難することも自由にできない。

 現状では、2027年5月に誕生する韓国新政権が保守になるとは限らない。尹政権が最後まで求心力を維持できれば、安全保障協力を一歩でも進めることができるだろうが、「政治家ではない尹錫悦大統領」には荷が重い期待かもしれない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。